新国立劇場の「ラ・トラヴィアータ」公演に足を運びました(2017年11月25日、初台、新国立劇場にて)。
イリーナ・ルングのヴィオレッタ、リッカルド・フリッツァ指揮の東京フィル、演出はヴァンサン・ブサール。
演奏にはかなり満足しました。
ヴィオレッタは声に艶があり色香たっぷり。音程も安定していました。演技も情感に溢れていた。
「花から花へ」の最後の部分は慣例で、3点変ホ音という超高音で締められることになっています。カラスやモッフォ、コトルバス、デヴィーアたちはそうしていますが、楽譜通りに歌う人も多いようです。
で、ルングは慣例の通りに歌いました。粘った。素晴らしかった!
アルフレートは透明感がある声を、柔軟にコントロールしていました。この役を得意とするヴィラゾンに勝るとも劣らないと感じました。
ジェルモンも見事。非の打ち所がない歌唱でした。ただ好みを言うならば、もっと豊満な声がいい。
東京フィルは彼ららしい、柔らかな響きを聴かせてくれました。強弱の塩梅を含めて歌手との息がぴったりだったのは、指揮者の手腕でしょう。
省エネっぽい舞台演出は、1,2幕は音楽に集中できて悪くはありませんでしたが、3幕はいただけなかった。
ヴィオレッタのベッドの後ろに大きな魚の浮き袋みたいな膜があり、アンニーナを始めすべての登場人物はその膜のなかにいる。よって、ヴィオレッタとアルフレートとの再会の場面も、ヴィオレッタの死のシーンも、歌には感激したものの、違和感を感じないではいられませんでした。
この演出以外は、満足のゆく公演だったと思います。
アルフレード:アントニオ・ポーリ
ジェルモン:レヴェンテ・モルナール
フローラ:小林由佳
ガストン子爵:小原啓楼
ドゥフォール男爵:須藤慎吾
ドビニー侯爵:北川辰彦
医師グランヴィル:鹿野由之
アンニーナ:森山京子
ジュゼッペ:大木太郎
使者:佐藤勝司
フローラの召使い:山下友輔
パースのビッグムーン。
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