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ジュリーニのロッシーニ「スターバト・マーテル」

2007.12.16 - ロッシーニ

giulini

ロッシーニ「スターバト・マーテル」 ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団 他


NHK-FMでガッティの「ボリス・ゴドゥノフ」原典版が流れている。この曲は、のちにR・コルサコフが編曲した版で有名になっているが、オーケストレイションのどこが不満で手を入れたのかわからない。
鮮やかさは薄いものの、弦のなめらかな響きや木管のシンコペーションなど、素朴でありながら胸にしみ込んでくる味わいがある。指揮者、そしてボローニャのオケがいいのじゃないかと思う。とはいえ、この曲を通して聴いたことは記憶にないし、寝そべりながら雑誌読みながらのテキトーな聴きかたなので大きなことは言えない。

聴いた記憶がないといえば、ロッシーニの「スターバト・マーテル」もそう。この作曲家の声楽曲は、昔にシャイーの指揮による「荘厳ミサ」を聴いた以外に経験はないかもしれない。
巨匠の指揮で聴いてみた。

1.導入唱「悲しみに沈める聖母は涙にむせびて」
静かで遅い重厚な音楽。ティンパニの一撃の思いがけない軽やかさと、明るくてひんやりした低弦、そして腰の重いテンポというマッチングがジュリーニらしい。

2.テノールによるアリア「嘆き憂い悲しめるその御魂は」
テノールはスペインのダルマシオ・ゴンザレス。まぶしいくらいに光を放つ高らかな声が素晴らしい。かなわぬ恋を語りあげるアリアのようであり、宗教曲であることを忘れる。

3.二重唱「たれか涙を注がざる者あらん?」
リッチャレッリ、ヴァレンティーニ・テラーニというふたりのソプラノによる。それぞれソロで歌い、やがてふたりが一緒に歌うところ、よく溶け合っていて惚れ惚れする。オケは脇に回っているが、じっくりと何度も推敲を重ねたであろう緻密な音づくりは聴きのがせない。

4.バスによるアリア「人々の罪のため」
バスはライモンディ。恰幅のよい声で、荘厳で流麗なメロディーを歌いぬく。

5.無伴奏合唱とレチタティーボ「悲しみの泉なる御母よ」
透明感のある合唱がいい。これにライモンディの声が重なりあうところ、とても美しい。これは耳の快感だ。ビールがすすむススム。

6.四重唱「ああ聖母よ」
4人の独唱者が惜しみなく美声を披露する。まるで追い詰められたヒロインとヒーローの心情のような切迫した音楽で、世俗的に劇的という感じ。

7.カヴァティーナ「その御傷を深くしのばしめ給え」
テラーニによる独唱。張りとツヤがあり、それに適度なコクのある名唱。ワインでいえばカベルネよりはメルローに近いか。なんて、どっちもよくわかっちゃいないが。

8.アリアと合唱「審判の日にわれを守り給え」
今までおとなしくしていたオーケストラがとうとう爆発。フィルハーモニア管のラッパの響き、壮絶である。

9.無伴奏合唱による四重唱「肉体は死して朽ちるとも」
無伴奏の合唱を聴くと、なぜか身を洗われるような、神妙な心持になる。宗教的な匂いがそこにあるからだろう。かといってオーケストラが不純ということもないのだけど。

10.終曲「アーメン、とこしえにわたり」
金管の咆哮に始まって、やがて合唱によるフーガ。あたかも「怒りの日」のよう。細部にわたって手の行き届いたジュリーニの丁寧な音楽づくりと、熱狂的な合唱がしみいる。宗教や言語を乗り越えて心に迫ってくる音楽だ。
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