
アリス=紗良・オットのピアノリサイタルに足を運びました(2025年6月26日、文京シビック大ホールにて)。
アリスさんのピアノは以前テレビでチラッと触れたのみで、まとめて聴くのはこれが初めて。
演目はベートーヴェンとジョン・フィールド。後者は1782年アイルランド生まれであり、活躍した時期はベートーヴェンと重なります。
この日取り上げられたのは「夜想曲」で、この呼称の発案者であるとのこと。それぞれ数分から5分程度の小品はアクが少なくスマートで、ベートーヴェンの箸休めのように感じられました。
なので印象に残ったのはベートーヴェン。
3曲とも好きな曲ですが、19番は終始テンポを細かく揺らしていてピンときませんでした。
30番はよかった。直球を中心に組み立てたがゆえに、清澄な情緒が浮き上がったように感じました。
「月光ソナタ」は快速なテンポで押した終楽章の迫力が際立ちました。
アンコールは、ひんやりとしたアルヴォ・ペルトの「アリーナのために」。
彼女のピアノは丸みを帯びて柔らかく、強く叩いてもひび割れないところが特徴だと思います。
また、曲間のおしゃべりも興味深いものがありました。月光の1楽章の付点のリズムは、「ドン・ジョヴァンニ」で騎士長が殺害されるシーンの音楽を引いたのでは?と、ピアノで弾きながら解説してくれて面白かった。

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