ボールト指揮ロンドン交響楽団・他の演奏で、ヘンデルの「メサイア」を聴きました(1961年、ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音)。
世評の高い演奏ですが、初めて聴きました。
ボールトの指揮はゆっくり目のテンポであり、呼吸が深く大らかで、生きることの豊潤な喜びに満ちています。浮世の雑事をしばし忘れる。
この曲のディスクでは、ピノック盤、ショルティ盤、パロット盤、リヒター盤(旧)、コッホ盤、ガーディナー盤、ビーチャム盤(新)などを気に入っていますが、このボールト盤もそのなかに入りそうです。
ソプラノとアルトはビックネームですが、男声も好調。
テノールは「慰めよ、わが民を慰めよ」以下、クセのない細やかな歌声を聴かせてくれます。
バスは、細かいパッセージで音程があいまいにあるところが若干あるものの、恰幅がよく威厳たっぷり。
ソプラノは感情移入が多分なため、少しオペラティックな歌い回しになっていますが、可憐でいい。「シオンの娘よ、大いに喜べ」では軽やかなコロラトゥーラを聴かせます。
アルトは艶があって、ノーブルで、それでいてどっしりと落ち着き払っています。安心して聴いていられる。
合唱も安定しています。「こうして主の栄光があらわれ」から「ほふられた小羊こそは」に至るまで、イキイキとしていて野趣がたっぷり。土台をしっかりと支えています。特に好きな「ひとりのみどりごがわれわれのために生れた」は生命力に溢れており、聴いていていっときの幸福を感じないではいられません。
ロンドン響もいい。いぶし銀のような響きが、しっとりした落ち着きを醸し出しています。「ラッパが響いて」におけるトランペットは見事。
ジョーン・サザーランド(ソプラノ)
グレース・バンブリー(アルト)
ケネス・マッケラー(テノール)
デイヴィッド・ウォード(バス)
ジョージ・マルコム(チェンバロ)
ロンドン交響合唱団
パースのビッグムーン。
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