ダニール・シャフランのチェロ、ディーター・ツェヒリンのピアノで、シューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ」を聴きました(1958年、東ベルリンでの録音)。
この曲は、現在では全く廃れてしまったアルペジョーネという楽器のために作曲された作品です。ただ、この楽器の創案者であるシュタウファー以外には、この楽器を制作した形跡がないそうです。極めて希少性の高い楽器のためにシューベルトが書いた理由として、彼の友人の中にアルペジョーネの唯一と言っていいくらいの演奏家がいたためとみられています。
作曲は1824年。シューベルト晩年の入り口といっていいでしょう。彼はまだ27歳だったわけですが。
シャフランの演奏は、とても洒落ています。音色は軽やかであり、ところどころポルタメントをかけて甘く仕上げています。その甘さの端々から、シューベルト特有の陰鬱さが立ちのぼります。
彼はロシア人で、同時代のチェリストにロストロポーヴィチがいます。でも、スタイルはだいぶ異なるように思います。シャフランからは、どちらかと言えばジャンドロンやフルニエといったフランス系のチェリストに近い肌触りを感じます。
この演奏は素晴らしく、いままで聴いたアルペジョーネのディスクのなかで一番気に入っています。
パースのビッグムーン。
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