筒井一貴さんのフォルテピアノ・リサイタルに赴きました(2017年11月16日、目白、自由学園明日館講堂にて)。
演目は、シューベルトの即興曲全曲(作品90、142)です。
これらの曲が、オリジナルのウイーン式ピアノで奏されるとのことで、楽しみにしていました。
このフォルテピアノが、ときには地鳴りがするような力強さを響かせていたことが驚きでした。順番は逆になりますが、142-4で、高音から低音へグリッサンドで終結するところは、悪魔的な熱狂があり、ハッとさせられました。
ピアニストはプログラムの解説で、100年以上前のオリジナル楽器の魅力について、こう語っています。
「現代の製品とは根本的に異なる、難しくも底知れぬ魔力を備えています。それは、現代という社会が逃れられぬ『抜け目無い効率=標準化の呪縛』とは相容れぬ、歴史的に封印されたナニか」。
もっと牧歌的で素朴な楽器かと思いきや、あるときはシューベルトの後期特有の陰鬱さをあからさまに炙り出し、または生きる喜びに満ちた朗らかな空気を滲ませるなど、とても幅の広いものであることを再認識させられました。
とくに感銘を受けたのは、作品90-1。長調の第2(?)主題は、軽やかにホールを飛翔し、たっぷりとした哀感に湛えられていました。
ピアニストは、この朴訥にして誠実な演奏において、「標準化の呪縛」から見事に逃れているのではないかと推測しています。
パースのビッグムーン。
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