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ドホナーニのバルトーク「中国の不思議な役人」全曲

2009.06.13 - バルトーク
st

バルトーク「中国の不思議な役人」 ドホナーニ指揮ウイーン・フィル、ウイーン国立歌劇場合唱団


田村隆一の「詩人からの伝言」を読む。
詩人ほど元手のかからない商売もないものだが、職業として成り立つかどうかは別の話。
詩で飯を食うほど難しいものはないだろう。
今の時代、詩でベストセラーを出すことはハレー彗星の到来よりも珍しいことじゃないだろうか。
有名なヒトでも、たいがい副業している。この田村ほどのヒトでもクリスティーの翻訳などをやっているくらい。もっとも、食えないから翻訳しているのか好んでやっているかはわからないけれど。
副業をしているとはいえ、詩人として生きていることはスゴイ。モテモテなのもうなづける。
その田村の含蓄深い言葉がこれ。
「自分が実際に経験した辛いこと、痛いこと、面白いことを素直に次の世代に伝えるのが、教養なんだよ。いろんな本から引用してしゃべることを、ぼくは教養と思っていない」。
「今は過去の上に在るんだぜ。過去と今はつながっているんだ。継ぎ目がわかりにくい積み木みたいなものさ。だから、過去を大事にしないということは、今を大事にしないということになるんだ」。
こうして田村の本からも引用しているワタシの文章などは教養のカケラもないわけである。
こういう話を、一杯やりながら聴いてみたかったものだ。
もちろん、お姉ちゃんを隣にはべらせて。


ドホナーニのバルトークは切れ味バツグン。
このバレエ曲は瞬間的に沸騰するような場面がいくつかあり、それはピアノ協奏曲2番を思い起こさせる。
あたかも短距離走の瞬発力のようなパワーは、バルトークを聴く醍醐味のひとつだ。
ウイーン・フィルは濃厚な響きを発揮しつつ切れ味よく応えている。トロンボーンとホルンと大太鼓の溶け合うところは、腹にどっしり響き渡って迫力満点だ。
この演奏は70年代の録音だが、この頃のウイーンフィルがこんなにバルトークをよく鳴らせているのは珍しいことなのじゃないかと思う。
当時FMで聴いたムーティとのオケコンはひどく精気に欠いたもので、とても一流と言われるオケのものではないように思い、軽いショックを受けたものだ。
技術的な問題も抱えていたが、それよりもバルトークの音楽に対する姿勢が消極的というか慣れていないことが原因だったように思う。
それを考えると、このドホナーニの指揮は素晴らしい。覇気に満ちている。オーケストラのねじ伏せかたはショルティ並み、でもこういう指揮者をウイーン・フィルは好まないのだろうな。

1977年、ウイーンでの録音
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Comment

無題 - ニョッキ

こんばんは。

私もこの演奏は大好きです。
ウィーンフィルも抜群のキレを見せてくれますね。

>ドホナーニの指揮は素晴らしい。覇気に満ちている。オーケストラのねじ伏せかたはショルティ並み

ドホナーニってもっと大人しいイメージがあったのですが、見直しました。
2009.06.14 Sun 00:30 URL [ Edit ]

Re:ニョッキさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

この演奏、ウイーンフィルのキレのある響きがいいですね。こういう曲はわりとアメリカやイギリスのオーケストラが得意としていますが、ここでのウイーンは冴えています。
全曲というところも嬉しいです。

ドホナーニはいつも理知的な演奏をしますが、このバルトークはそれに加えて熱いものを感じます。
2009.06.14 18:10

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

詩人という生き方、これに憧れもありますね
「教養」という言葉、もう死語になりかけているのではないかな、と思います。過去との対話で今は成り立っている、まさにその通りですよね〜。それすらも共有できない時代に来ているような気もします〜。

ドホナーニの演奏 聴いておりません(いつもながら、爆〜)。
バルトーク、今聴いている最中なんです。弦楽四重奏曲ですが、何が何やら分かりません、爆〜。
オケストラ曲の方がまだ分かりやすいかもしれませんよね〜。この「不思議な中国人」オーマンディの演奏でしか聴いたことがないように思います。
少しはレパートリーを増やしたいのですが〜。

ミ(`w´彡)
2009.06.14 Sun 05:23 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

詩人という生き方憧れますね。
紙をペンだけを手に、思うままに起きて寝て、好きなときに好きな場所へ飛び回る…。
そんな世界はないですかね^^

ドホナーニのメリハリのついた演奏がけっこうすきなのですが、なんだか地味な印象があります。このバルトークは熱い演奏です。
バルトークの弦楽四重奏曲は難解ですね。たまに聴きますが、いわゆる現代音楽の香りがします。
オーケストラ曲はわかりやすいのでよく聴きます。
オーマンディの演奏よさそうですね。
2009.06.14 18:16

ドホナーニのオケコン - neoros2019

幻想、タコ10に次いで我慢できず手中にしてしまいました。
想像以上の抑制された鋭利、冷徹な解釈で期待に違わず一安心です。
オケコンについてはブーレーズ、インバル、、チェリで失望した前歴があるので。
マーラーやブルックナー、シューマンを正規収録しているようですがそのカテゴリーより個人的にはR.シュトラウスやショスタコの4番、8番などドホナーニ/クリーブランドで切に聴きたいものです。
2017.03.25 Sat 21:48 [ Edit ]

neoros2019さん、こんばんは! - 管理人:芳野達司

オケコンですか、それは良さそうですね~。
この曲は、ライナー、ドラティ、オーマンディあたりは安定していますが、面白い演奏は意外とすくないですよね。ドホナーニ、聴きたいです。
ショスタコの4、8は録音していたのでしたっけ。あれば、買いですね!
2017.03.25 21:59
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