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グールドとストコフスキーのベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番"皇帝"」

2009.06.14 - ベートーヴェン


bee

ベートーヴェン「皇帝」 グールド(Pf)ストコフスキー指揮アメリカ交響楽団


実家からレコードを引き取って、さて聴こうという段になって音を出してみると左のスピーカーから音が出ない。接触が悪いのかと思ってジャックをグリグリしていたら先っぽの金具が取れてしまったので、レコード・プレイヤーを修理屋に持って行ったのが先週の話。
そして今朝、修理屋へ取りに行き、セッティングをしていざ聴いてみると、やはり左から音が出ない。
悪いのはアンプであった。
また修理屋へ行くのは面倒なので、自力で直すことにした。
ジャックを差し込む穴(なんという名前なのだろう)に爪楊枝に濡れティッシュを巻きつけて掃除。
そしておもむろにラジオペンチを取り出して、穴の周囲の出っ張っているところを強引に挟んでグリグリと押し込む。古いアンプだから壊れたら仕方がないと、けっこう力を入れてグリグリ。
そしてためしにレコードに針を落としてみると、おお、聴こえる。若干左のほうの音量が小さい気もするが、音がでりゃいいやということで左右のバランスを調整して聴けばいいという結論に無理やりもっていった。
また聴こえなくなるのは時間の問題かもしれないけれど、そのときはアンプを買うしかないと腹を括る。


取り出したのはなつかしのLP。
昔読んだ本に、この録音のエピソードが書かれていた。
ストコフスキー「グレン、今日は遅いほうにする?速いほうにする?」
グールド「遅いほうにしますか」
こんなような会話だったと思う。もしかしたら、セリフが逆だったかもしれないがうろ覚えなのであまり自信はない。
ホントかどうかも定かじゃないかもしれないけど、このふたりならなんだかありえそうな話だ。
で、結局この演奏は「遅いほう」に決定したわけだけれど、実際聴いてみると冒頭のカデンツァは遅い。ズッコケるくらいに遅い。途中で止まるのではないかというくらい。
だんだん聴き進むうちに慣れてきて遅さは感じなくなってくる。実際には徐々にマトモなテンポになってきているみたい。
この演奏の聴きどころは2楽章の後半と3楽章だと思う。
2楽章におけるピアノの分散和音とフルートのかけあいの、なんとも穏やかな佇まいがすばらしい。ひんやりと澄み切った美しさがある。
3楽章は最初のロンド主題がよい。ことに左手の打鍵が明瞭に聴こえるために強いダイナミズムを感じる。
ひとつひとつの音が粒だって聴こえるところは、テンポの遅さに要因があるのだろう。

ジャケットではグールドとストコフスキーが違う方向を向いている。両者の演奏スタイルを象徴しているとは穿った見方かもしれないが、この録音ではじつに息が合っている。

1966年3月、ニューヨーク、マンハッタン・センターでの録音


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Comment

無題 - 木曽のあばら屋

こんにちは。
この「皇帝」はまさしく怪演ですね。
初めて聴いたときには私もずっこけそうになりました。
しかし、慣れると心地よくなってきます。
たまに思い出したように聴きたくなる不思議な演奏です。
2009.06.14 Sun 21:22 URL [ Edit ]

Re:木曽のあばら屋さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

この「皇帝」、中学のときに仲間うちで話題になりました。「おいおいグールドがまた変なことやってるよ」と。
もっとも全然リアルタイムではなかったのですが。
グールドといえば変なことをするヒトという先入観がたっぷりありました。

今じっくり聴きなおしてみると、これはこれで、なんというか大変恰幅のよい堂々たる演奏です。
ストコフスキーも素晴らしいですね。
2009.06.15 21:13

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

オーディオ機器、私も、難儀しています
CDプレーヤーがおかしいです、爆〜。
面倒ですし、厄介ですね〜

ストコフスキーとグールドの競演ですか
面白そうですね
グールド、ストコフスキー、いずれもあまり聴いていない演奏家です。ストコフスキーはまとめて一度は聴いてみたいと思っているのですが、いつのことになるやら〜。

ミ(`w´彡)
2009.06.15 Mon 07:44 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

ここのところ、電器機械の調子が悪いのです。
アンプの調子がいまひとつなのと、テレビが時々オバケのように消えるのです。あとCDプレイヤーもオシャカ状態なのでDVDで聴いている有様で…。
電化製品のガタって、いちどきに来ることがありますね。
困っています。

この「皇帝」はお薦めです。
今まで聴いた中では5本指に入る演奏じゃないかと思います。もっとも、そんなにいろいろと聴いているわけではないのですが。
グールドのベートーヴェンは安定していると感じます。
2009.06.15 21:19

無題 - neoros2019

まさにそうですね
結婚した直後に6~7万出して購入した二十年近く経過するデンオンのシステムコンポのアンプ部分の接触部分はボリュームを何十回となくギリギリ回さないと片側から音が出ないという状態になっています
購入するんだったら、百万ぐらいかけてアンプからスピーカー、CDプレーヤーまで厳選したい気もしますがまだ5年以上先の話になりそうです
(米国シュアーのカートリッジとアナログレコードプレーヤーも含め)
1966年のメジャーなCBS録音なら結構な音が聴けると想定します
2009.06.15 Mon 11:31 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

アンプって、意外に持たないような気がします。
私が音楽を聴き始めて3代目なのですが、そろそろガタがきているようです。
スピーカーはまだ2代目なのですが、元気です。

グールドの「皇帝」は、音そのものはさほどいいものではないようですが、これも装置によるものなのかもしれません。いい機械で再生したらそれなりの音で聴こえるかも…。
CDではあまり気にならないですが、何故かLPになると再生具合が気になります。
2009.06.15 21:30
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