忍者ブログ

ミケランジェリのシューマン「謝肉祭」

2009.06.20 - シューマン

sch

シューマン「謝肉祭」 アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(Pf)


柳井正の「一勝九敗」を読む。
現在ファーストリテイリング社長である著者が描く「ユニクロ」成長記。
全編に渡って自慢話に満ちている。迷いがないところは痛快。途中で読むのが辛くなったが、電車のなかだったので行きがかりじょう読み終えた。
丁寧なことに巻末には「起業家十戒」なるものが添えられている。
著者はもはや日本のトップの富豪であるので、標題は嫌味を超越した選定といえる。


ミケランジェリによる「謝肉祭」の旧盤。
1957年のスタジオ録音なのにモノラルなのが痛いといえるが、音は悪くない。この時代のミケランジェリの凄さを、全曲に渡ってじゅうぶんに伝えてくれる。
まずなによりピアノの音がいい。泡の混ざらない氷のように透明で強い力があって鋭く輝かしい。
もうこれしかないという決然たる態度が漲っていて、一分の迷いもない。
あたりまえのことであるが、普段まみれている日常生活とは隔絶された世界だ。俗世間のわだかまりなんかを一瞬たりとも感じることはできない浮遊の境地といえる。
音の美しさに加えてシューマンの霊感も濃厚このうえない。張り詰めた緊張感と幻想味が全曲を覆い、いっときたりとも聴き逃すことはできないが、どれか一曲といわれたら14曲目「再会」に止めを刺すことになる。ピアノの最高の音にして、楽器そのものさえ忘れそうな至福の響き。ただただ快感である。
こういう音を他のどこで聴くことができるだろう。そうそうあるものではない。

1957年3月、ロンドンBBCスタジオでの録音。

PR
   Comment(1)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

ユニクロの社長さんの文章まで読まれるとは〜
実に読書の幅が広いな、と感心しています。
アメリカではこの手の成功譚が良く出版されていますが、日本でも出版されるようになってきているんですね〜。この分野でもアメリカ化が進んでいる感じがしますね〜。

ミケランジェリ、このCDも持っていて、聴いているのではないかと思うのですが、忘れています、爆〜。
ミケランジェリのあの美しい音、どうしたらああいう音が出るのか、不思議でなりません。
久し振りに聴いてみたくなりました〜。

ミ(`w´彡)
2009.06.21 Sun 07:54 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

成功者による経営論はどれも似たようなもので、このユニクロ社長によるものも例外ではありませんでした。新しいものは感じられません。途中で飽きてしまいました。

ミケランジェリの録音はどれもいいものですが、この「謝肉祭」はなかでも格別です。まったく独特の音ですねー。
これがステレオだったらと思わずにはいられませんが、それは贅沢かもしれません。残されていることそのものに感謝するべきなのかもしれません。
この演奏はピアノ録音史上の快挙じゃないかと思います。
2009.06.21 17:41
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー