新国立劇場バレエ団・他による、チャイコフスキー「眠れる森の美女」を観ました(2017年5月6日、初台、新国立劇場にて)。
バレエの公演には何回か足を運んでいますが、最初に幕が開いたときの、なんともいえないワクワク感は、いまだに色褪せることはありません。
衣装の華やかさ、舞台装置の可愛らしさ、そしてふうわりとした温かさを纏った照明。
昨日も、そう。
これから始まるおとぎの世界の幕開けにふさわしい演出は冒頭の数分で、勝負あった、という感じでした。
米沢さんの小柄なオーロラ姫は、躍動感に満ちていてステキだったし、対照的に背の高いムンタギロフさんの王子も、スケールの大きな踊りを見せてくれました。
オーロラ姫が生まれたときの、湧き立つ雰囲気。なんとも華やかで幸福なひととき。みんなで踊りあかしますが、やがて悪の妖精カラボスが現れ、暗雲が立ち込める。カラボスは、あたかもタイム・ボカンシリーズのドロンジョのようで、色っぽい悪女。やはり敵役は魅力がないといけません。
ストーリーに則った1,2幕を経て、3幕は個人技の披露宴。わずか数分のなかに、バレエの魅力を詰め込んで魅せました。踊りの専門的なことはわからないのですが、誰もが高いレベルで競っていることは感じられました。
2幕2場は、2曲ほど聴いたことのない音楽が流れていて、それがサザーランドの編曲であるのかなと推察。
指揮のバクランさんを聴くのは2回目。前回は「くるみ割り人形」を聴きました。バレエ音楽のスペシャリストのようです。音楽を踊り手にぴったりと合わせるところは、まさに水を漏らさぬほど。こんな指揮ならば、バレリーナは安心して踊ることができるでしょう。
バランスよく緩急をつけ、強弱の抑揚が豊かな指揮ぶりは、たとえ舞台なしでも、聴きごたえのあるものだと思います。
東京フィルは万全。この曲においてはアンサンブルに加えて、ソロも高い技量を要求されていますが、オーボエを始め、クラリネット、フルート、ピッコロ、ヴァイオリン、チェロといったところは安定したテクニックに加えて情感を豊かに伝えていました。
また、このオーケストラは、昔から弦楽器がいいのです。濃厚なクリームのようなコクのある音。この公演においても、それは惜しみなく発揮してくれました。冒頭のアタックから痺れました。
それにしてもやはり、全体を支配していたのは、チャイコフスキーの音楽。2時間強の間、まったく飽きさせない。メロディーのよさもさることながら、オーケストレーションの見事さは、生で聴くとより一層実感できます。
やっぱり、チャイコフスキーのバレエはいい!
オーロラ姫:米沢 唯
デジレ王子:ワディム・ムンタギロフ
リラの精:木村優里
カラボス:本島美和
フロリナ王女:小野絢子
青い鳥:福岡雄大、他
芸術監督:大原永子
編曲:ギャヴィン・サザーランド
振付:ウエイン・イーグリング (マリウス・プティパ原振付による)
装置:川口直次
衣裳:トゥール・ヴァン・シャイク
照明:沢田祐二
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
パースのビッグムーン。
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