ゲヴァントハウス弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲14番を聴く(1996年5月-1997年1月の録音)。
これは、柔らかい演奏。
柔らかいといえば、定評のある、ウイーンのバリリやアマデウスも聴いた。録音の塩梅にもよるだろうけれど、ゲヴァントハウスのほうが柔らかいように感じた。
4つの楽器のどれもがきめ細やかで、上質なシルクの手触り。それがかけ合わさると、ほどよく空気がブレンドされて、触れればホロホロと崩れそうなくらいに繊細な合奏になる。
2楽章アレグロは愉悦。どの楽器も、イキイキと飛翔しているよう。苦悩をしばし忘れる。
4楽章アンダンテは、強弱の抑揚が自然につけられていて、表情豊か。コクのある響きがおいしい。
5楽章プレストは速すぎない中くらいのテンポ。演奏によっては超攻撃的にもなる曲だが、ゲヴァントハウスのは温厚。ひとつひとつの音符を丁寧に奏でる。
7楽章アレグロもじっくりした足取り。これほど堅苦しい音楽もそうそうないものだが、彼らの弾きぶりからは作曲家に対する畏敬の念に加えて、大きな愛情を感じることができる。だから、親密、とまではいかないけれど、この音楽は自分と同じ世界にあるのだな、くらいには感じることができる。
フランク・ミヒャエル・エルベン(ヴァイオリン1)
コンラート・ズスケ(ヴァイオリン2)
フォルカー・メッツ(ヴィオラ)
ユルンヤーコプ・ティム(チェロ)
パースのビッグムーン。
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