2016年4月23日、東京芸術劇場
オネゲル「パシフィック231」
グリーグ ピアノ協奏曲
ピアノ:小山実稚恵
チャイコフスキー 交響曲6番「悲愴」
指揮者の山田和樹は「ヤマカズ」という愛称で親しまれているようだ。でも、私の世代の「ヤマカズ」といえば山田一雄。彼は昔、東京フィルにたびたび客演をしていた。
30年以上前のある夜、「展覧会の絵」などをやったコンサートの終演後に出待ちをしていたら、たったひとりで楽屋口から出てきた。取り囲むファンは、誰もいなかった。なので、感想などをお話させて頂いた。とても気さくで感じのいい老紳士だった。
なので、新進気鋭の指揮者が、「ヤマカズ」を名乗るにふさわしいのかどうか(?)、それに着目した。
オネゲルは、今日、最も密度の濃い充実した演奏だったかも。
アンセルメに献呈されたことが納得できる、数理的なリズムで構成されたこの曲を、山田はスムーズかつ緻密に再現しており、機関車の疾走といった副題感がなくとも楽しめた。
グリーグにおける小山のピアノは、本コンサートの白眉と言っていいだろう。いささか硬質な響きは曇りなく、大ホールをくまなく覆い尽くした。速いパッセージでも音が固まらず、ハラハラとほぐれているあたりは、名人の技。
特に2楽章は、ピーンと張り詰めた霊気が漂っており、背筋が痺れた。
少し注文をつけると、オーケストラの音が大き過ぎる。
「悲愴」は、後半が良かった。3楽章は、大行進曲に至るまでの過程で、クラリネットやピッコロがなにげに見え隠れするが、シリアス過ぎずコミカル過ぎず、いい塩梅でユーモアを帯びていて楽しかった。
4楽章は熱演。弦楽器は号泣。あからさまではあるけれど、こんな豪速球のやり方もありだろう。
全体を通して、山田の指揮は各パートを存分に鳴らせて剛直。細かい指示をマメに出していることは見ていてわかった。ただ、オーケストラが振り慣れた日フィルでなかったことから、行き渡らなかったのではないか、というのは憶測。
いずれにせよ、元気が良くて、気持ちはいい。
「ヤマカズ」の後継者として、大きな期待をする。
春。
PR