フォーレ「マスクとベルガマスク」組曲
ベートーヴェン ピアノ協奏曲4番
ピアノ:イモジェン・クーパー
ハイドン 交響曲103番「太鼓連打」
2016年4月22日、東京、紀尾井ホール
かつて、「ピノックに駄作なし」と言い放ったのは、三浦淳史である。
これまでピノックのレコード、CDをわりと多く聴いたけど、たしかにヒドい演奏は見当たらない。そして、ライヴは、まだ2回しか聴いていないが、どちらも素晴らしい出来栄えだった。
2回目は、今夜のコンサートである。
1曲目のフォーレは彼にしたら珍しい演目。だが、かれは若い頃、カンタベリーの聖歌隊だったときに「レクィエム」を歌って感動したり、ギレリスなどロシアのソリストが弾いたピアノ四重奏曲に親しんだという。
瑞々しい響きとオーセンティックな味わいは、あたかもフランスの「古典交響曲」の趣き、しなやかでロマンティック。
ベートーヴェンは、クーパーの柔らかでふうわりとした肌触りの質感と、オーケストラの切っ先鋭い硬質な響きとが好対照。オケがピアノにぴったりと合っているので、不思議なブレンド感がある。
2楽章でピノックは、弦を思い切り短く詰め、今まで聴いたことのないような緊張感を出していたのが印象的。
最後のハイドンは苛烈。春の嵐みたいだった。
通常のオーケストラならばハイドンのシンフォニーを前半に持ってくる。でも、メインディシュにふさわしい、これはご馳走であった。
変な例えだが、コープマンの闊達さと、バーンスタインの愛情を合わせたような、愛すべきハイドン。
ピノックは強靭な音を出す。
もちろん、フォルテとピアノとかは、ちゃんとある。なにが強いかと言うと、ひとつひとつの音にしっかりとした芯があり、迷いがないのだ。
リハーサルでも、具体的な指示をしているのだろうと想像する。奏者は弾きやすいだろうし、実際、今夜の演奏を聴いたら、多くの人は、紀尾井シンフォニエッタは、日本を代表するオーケストラのひとつと言うだろう。
そのくらい、精度が高く、パッションも濃厚だった。
春。
PR