ジュリーニ指揮フィルハーモニア管弦楽団・他の演奏で、モーツァルトの「レクイエム」を聴く。
この曲を通して聴くのは、少なく見積もって20年ぶりくらい。
吉田秀和はこの曲を評している。
「私の好まぬ補筆が入っているが、初演の時からあったのだから、今さら、それをとりのぞくわけにゆかぬ。それにしてもこれはもう、死の影においかけられた一人の天才の達成した奇蹟としかいいようのない音楽。私は、この曲には畏敬を感じる。とても座右において始終きくなんて生やさしい音楽ではない。」
中学のときにこれを読んだときはピンとこなかったが、じわじわときている。なにしろこの音楽は、陰鬱。たしかに生やさしくない。モーツァルトでいえば、他に好みの曲が多いという理由で聴かないということもある。
だからディスクも少なくて、ケルテス指揮ウイーン・フィルのレコードと、ジュリーニ指揮フィルハーモニアの旧盤CDがあったのみで、本盤は3つめ。
ジュリーニはゆっくりとしたテンポで重厚に歌っており、それは旧盤よりも徹底している。フィルハーモニア管弦楽団はいつもより暗めの色調なので、陰鬱感は格別なものがある。
吉田が言うようにジュスマイアーが補筆した部分が初演時からあったのかわからないが、通して聴くと「ラクリモサ」より後の曲は、それまでの曲との連関が薄いため違和感がやはりある。でも最後に1曲目のメロディーが登場すると、結果的にうまくまとまっているように聴こえる。
やっぱりツラいわ。この曲を聴くことは、またとうぶんないだろう。
リン・ドーソン(ソプラノ)
ヤルト・ヴァン・ネス(コントラルト)
キース・ルイス(テノール)
サイモン・エステス(バス)
フィルハーモニア合唱団
1989年4月、ロンドン、ウォルサムストウ、アッセンブリー・ホールでの録音。
朝。
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