マーツァル指揮チェコ・フィルの演奏で、マーラーの交響曲7番「夜の歌」を聴く
(2007年5月、プラハ、「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホールでの録音)。
マーツァルの指揮によるマーラーを聴くのはこれで4曲目。いままでの3曲(1番、4番、5番)はオーソドックスな切り口でもって、オーケストラを気持ちよく鳴らせた演奏であったが、この7番も概ね、そう。
奇をてらったところは微塵もない、安心して聴くことのできるマーラーであるいっぽう、なんだこれは、という驚きは求められない類の演奏である。
ただ、この曲そのものが、どこに力点を当てたらよいかわかりづらい音楽ではある。マーツァルはあたかも、曲のわからないところを、率直にわからないよといいつつ演奏を提示しているようで、ある意味潔いと思われる。
1楽章は冒頭のテノール・ホルンが美しい。濃厚にヴィブラートがきいており、ああこれはチェコ・フィルの懐かしい音だと思わずにいられない。
2楽章もホルンがこよなくいい。やる気まんまんで迷いがない。行進曲風なくだりは、とても生き生きとしていて高揚感がある。楽器の分離も明快で、カウベルがよく聴こえる。
「影のように」と記された3楽章は、明るい。夜というよりは、あたかも斜めの陽光に照らされたスケルツォになっていて、面白い。これはこれで一興。
4楽章も、夜、というよりは夕暮れ時くらい。マンドリン、ギター、ヴァイオリン、オーボエを始め各楽器がしっかりと鳴っており、いままで聴いたことのないクラリネットが聴こえる箇所もある。もやもや感がなくスッキリ。
5楽章の出だしのティンパニ、トランペットはまずまず。4楽章がわりと明るめだったので、5楽章の眩しさの効果がいまひとつはっきりしない。それが、この演奏の唯一惜しいところ。
ただ、その後はだんだんと熱を帯びてきて、大きな臨場感がある。ラストは盛大に締めくくられ、気持ちがいい。
春。
PR