ラサール四重奏団のベートーヴェン後期四重奏曲遠藤拓郎と江川達也の「睡眠はコントロールできる」を読む。
来院した患者の実例に基づいて、さまざまな症例の回避策を紹介している。
江川の漫画を導入部として、遠藤の解釈が本編としてつづられる。遠藤は祖父の代から睡眠の研究を行っており、祖父は「楡家の人々」のモデルになった人物という。
睡眠時間は、1.5時間単位で取るのが基本とのこと。それは、ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルが1.5時間ごとの周期で交代しているからである。このサイクルにはまれば起きやすい、ということだが問題はそんなに単純ではなくて、そもそも人間の一日の行動サイクルは25時間なので、ほっておくと睡眠時間がずれていってしまう。そこで毎日サイクルを微修正する必要があって、そのもっとも有効な手段は、起きた時に太陽光をみることだという。これによって体内時計がリセットされるらしい。強い光を代替としても有効。
睡眠は大事だ。なにしろ、人生の1/4から1/3、あるいはもっと多くの時間を当てているのだから。
著者は一日4.5時間の睡眠を奨励しているが、寝るのが好きなワタシは平日は7.5時間、休日は9時間以上が目安なのだ。多いと思われるかもしれないが、あのエンジェルスの松井は10時間眠るらしいので、これでも少ないくらいである(おまえはメジャーリーガーか!)。
ラサールのベートーヴェン後期がようやく復活。待ち焦がれていたほどではないが、たまに思い出しては気にしていた。
普段はベートーベンの四重奏をさほど熱心に聴いているわけではないけれど、LPはちょうどクラシックを聴き始めたころに発売されたものなので、その存在はよく覚えているし、世評もえらく高かったのだ。
久々の発売はブリリアント。いっそうありがたい。一回の呑み代の半分で入手できてしまうのだから、酒を我慢せずに後期も聴くことができる。いいことである。
ラサールは4本のバランスがよく、強弱の抑揚が随所にきいていて彫りが深い。テンポは中庸なのに、ひとつひとつのフレーズを丁寧に弾いているから、じっくりと語り聴かせるような懐の深さがあると同時に、猛スピードが畳み掛けるような、情報量の多さも感じる。
音がひとつに固まらずに、それそれの楽器が微妙な空間を保っているので、見通しの良さと広がりがあるのだ。たとえて言うならば、口にいれた途端にふうわりとバラける、手ダレの職人が握った寿司飯のよう。空気の入れ具合が多くもなく少なくもなく絶妙で、その力加減はまさに職人芸とみた。腹減った。
ワルター・レヴィン(Vn1)
ヘンリー・メイヤー(Vn2)
ピーター・カムニツァー(Va)
リー・ファイザー(Vc)
1977年3月、ハノーヴァー、ベートーベン・ザールでの録音。
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