ハーゲン弦楽四重奏団高橋源一郎の「ペンギン村に陽は落ちて」を読む。
サザエさんとウルトラ兄弟、キン肉マンとキン肉妹とケンシロウ、スッパマンと女教師との邂逅。
これらはなにを意味するかといえば、たぶんなにも意味しないのである。なかでも、ゼットンがサザエさんにラブレターを渡すシーンなど笑えるが、それぞれの原作漫画を知らなれば面白さはわからない。とりあえず「少年ジャンプ」は読め、ということか(というか読んでいたか)。
まあ、なにはともあれ、ゼットン!
われわれの世代にとっては絶対的な存在である。なにしろ、ウルトラマンに勝ったヒトであるのだから。われわれが初めて知った、宇宙で一番強いヒト。ただ、このヒトが文学的にアリなのかどうか。そういった疑問に、高橋は迫る。漫画のヒーローを、文章の世界でもって生き返らせようとする。大きなテーマかも知れない。
だけど、則巻千兵衛が作ったロボットが、アラレちゃんではなくアトムなのはなぜだろう?
いろいろ考えさせられる小説である。
この長大な四重奏曲は、1825年から1826にかけて作曲された。14番と番号が振られているが、15番それから13番に次いで作られている。
これらの曲はそれぞれ5楽章、6楽章ときてこの14番が7楽章の編成となっているから、作曲順に楽章を増やす試みをベートーヴェンは行なっていたとの説もある。
このあたりの曲は、出てくる音楽そのものに加えて編成にも実験くささを感じるので、その説は正しいような気がする。だって、従来の形式の殻を破ろうとしつつも万遍なく自分をあらわすことにも成功して「革命児」として歴史に名を刻みました、というストーリーは、昔から刷り込まれた「芸術は爆発だ!」的なベートーヴェン像を裏切らないものね。
そんな姿が絵になる55歳の独身男。
ハーゲン四重奏団のベートーヴェンは、若々しくて不敵な演奏。四つの音の多彩さが際立つ。全てが弦楽器だというのに、星屑のように煌めいている。それぞれの楽器が固まらないで、あっちこちに飛翔する面白さがある。イキが良くて楽しい演奏であるが、ときに細部に拘泥しまくっているところがあるのは勢い余ったか、5楽章のラストで飛び出すヴァイオリンとヴィオラの、ガラスを引っ掻いたような音は、ちょっとやり過ぎじゃないかな。
ルーカス・ハーゲン (Vn1)
ライナー・シュミット (Vn2)
ヴェロニカ・ハーゲン (Va)
クレメンス・ハーゲン (Vc)
1996年12月、ザルツブルク・モーツァルティウム大ホールでの録音。
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高橋の小説は何冊か読みましたが、どれもなにかがひっかかるのです。この「ペンギン村」も一見読みやすそうな雰囲気を醸し出していますが、読み進むうちになんだかよくわからなくなっていきます。
ハーゲン四重奏団の演奏、ワタシは初めて聴きました。よくも悪くもやる気じゅうぶんといった感じで、覇気がある演奏です。悪くはないですが…けっこうクセはあります。
14番の四重奏曲、なんでもアリといった感じですね。最近少しはまっています(笑)。