忍者ブログ

オランダ管楽アンサンブルのベートーヴェン「ピアノと管楽器のための五重奏曲」

2010.07.19 - ベートーヴェン
 
be

オランダ管楽アンサンブルのベートーヴェン


坂口安吾の「続堕落論」を読む。
「堕落論」の続編は、のっけから過激な話で一気呵成に進む。ことに農村文化への批判は大きな物議を醸したのではないかな。
そんななかで、印象的なのは後半。「個」の世界への関わりかたを端的に書いている部分だ。
「個の生活により、その魂の声を吐くものを文学という。文学は常に制度の、また、政治への反逆であり、人間の制度に対する復讐であり、しかして、その反逆と復讐によって政治に協力しているのだ。反逆自体が協力なのだ。愛情なのだ。これは文学の宿命であり、文学と政治との絶対不変の関係なのである」。
ここで言わんとするところは、戦中、爆撃にびくびくしながらもけっこう楽しい生活を送っていた日本人に対するオマージュ、坂口の強烈な愛国心なのじゃないかと想像する。


ピアノと管楽の五重奏曲。
1796年から翌年にかけて作曲されたといわれるこの曲は、モーツァルトが作曲した同じ編成の音楽をモデルにしたらしい。
前例のないところから、こういう楽器編成で音楽を作るとするならばそれは冒険じゃないか、そんな気がする。シューベルトの八重奏曲もたしか前例をヒントに作ったのじゃなかったかな。
それに関連して、つねづね思っていたこと。作曲家がこうした編成の曲を書くとすれば、メロディーが浮かんだときに、たまたま特定の楽器に適っていたから当該の編成になった、それが普通の流れなのじゃないか。つまり、楽器にかなったメロディーが浮かんだときはいいとして、編成を指定されて委嘱されたときには、なかなかいろいろな楽器に合った旋律が思い浮かべるのは難しいのではないだろうか。
この曲でいえば、弦楽器で鳴らせるのが適切であろう旋律はあえて使わないだろう。シンフォニーや弦楽四重奏曲とは、違うメロディーや構成で勝負しなければならないはずだから。
でも、結果的に、みごとに他の楽器では替え難い音楽になっており、予定調和的な音楽になっている。このメロディーはオーボエに替え難い、ホルンの低音は必ず必要だ、なんていう具合に。
シンフォニーや四重奏曲を作るときとは、脳の違う部分を使っているのだろうか。全ての楽器を弾けるわけではないのに。この切り替えの妙。想像力のなせる技なのだろう。この曲に関して、これ以外の編成で代替することは想像しにくい。
ベートーヴェンやモーツァルトは平気でそういうことをやっているが、考えてみるとちょっと不思議だ。
いまさらだけど。

オランダ管楽アンサンブルの演奏は、気負いがなく、軽やかにして涼しげ。


クララ・ヴュルツ(Pf)
ハンス・マイアー(Ob)
ヘンク・デ・グラーフ(Cl)
マルチン・ファン・デ・メルヴェ(Hr)
ペーター・ガースターランド(Bs)


1997年1月、オランダでの録音。

PR
   Comment(1)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは
暑い日々が続いておりますが、お元気でしょうか?

沖縄から帰ってきて、当たり前ながら仕事に戻ると、「現実世界」に対応しなければならず、色々な葛藤が生じます。疲れ果てて、コメントが出来ませんでした;;

坂口安吾の「堕落論」懐かしいですね。
ちょっと探し出しましたが、きっと見つからないので止めました、爆〜。近いうちにアマゾンに注文しようかと思っています。
車谷さんの文学論に似ているように思いますね〜。

ベトベンの管楽器の曲は初期に限られていますよね、やはり弦楽四重奏曲や管楽器の曲を書くことで、オケストラ曲を書く修練をしたようにも思います。でも、初期の管楽器の室内楽もやはり素晴らしい曲になっていますね〜。
オランダの管楽器奏者は上手いですね、コンセルトヘボウの奏者も上手いです。
管楽器奏者は母語の発音の影響があるのではないかなと思いかけています〜。
色々と持っているのですが、これは持っていませんです〜。

(*´ω`*)
2010.07.25 Sun 18:09 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

毎日暑いですね。こちらは昨日、今日と突発的な雷雨がありました。散歩をしておりましたが、大雨になったのは家に着く寸前だったので助かりました。

長期休暇のあとの仕事のつらさは格別なものがあります。通常は土日が休みなのですが、たかだか二連休のあとの月曜すらキツイですね。
ましてや沖縄のあととなれば、ギャップは大きいのではないかと推察します。

「堕落論」懐かしいですねえ。
すごく大きなテーマを扱っているのに、文章がとても端的なんですよね。それが人気なのかもしれません。続けて「日本文化史観」を読み始めています。

>管楽器奏者は母語の発音の影響があるのではないかなと思いかけています〜。
なるほど。ドイツ語とフランス語とでは、発音がだいぶ違うところから、音や奏法にも影響することがあるかもしれませんねえ。
2010.07.25 21:49
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
4 5 6 7 8 9
11 12 13 14 15 16
18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新TB
カテゴリー