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"或る阿呆の一生"、C・デイヴィス、ベルリオーズ"序曲集"

2013.03.02 - ベルリオーズ

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ベルリオーズ:序曲集 C・デイヴィス指揮 ドレスデン・シュターツカペレ



芥川龍之介の「或る阿呆の一生」を読む。

これは、作者が20歳のときから死ぬまでの半生を断片的に描いた作品。51の章から成るが、それぞれに論理的な脈絡はない。だから形式としては、小説というよりも独白といったほうが近い。
内容はひたすら厭世的であり、ああ、この人は生きていることそのものがツラいのだなと、しみじみ思う。その考え方や行動に、共感できてしまう。

だから、これはとても危険な作品なのだけど、ある種の抗しがたい魅力を感じないわけにいかないのだ。











コリン・デイヴィスのベルリオーズを聴く。

序曲「宗教裁判官」
序曲「ウェーヴァリー」
序曲「リア王」
序曲「ローマの謝肉祭」
歌劇「ベアトリスとベネディクト」序曲
序曲「海賊」
歌劇「ベンヴェヌート・チェッリーニ」序曲

ドレスデン・シュターツカペレによるベルリオーズは比較的珍しいと思うが、このオケの長所を満遍なく発揮させた演奏となっている。
コクのある弦の響き、柔らかい金管楽器の音色が、残響のたっぷりした録音と相まって、とても耳触りがよい。
それは1曲目の「宗教裁判官」から顕著。ベルリオーズのスペシャリストによる手にかかり、多彩な音響美を堪能させてくれる。

全体を通して、どっしりとした厚みがあって、優美なベルリオーズ。ことさらに管弦楽美をあらわそうとはしない、落ち着いたオーソドックスなスタイル。デイヴィスの余裕を感じることのできるディスクだ。
「ウェーヴァリー」と「リア王」は、録音もそう多くはないと思う。ことに「リア王」は変な曲だ。分裂している。名曲とは言い難いがたいだけに、なおさらこの名コンビによる貴重な演奏と言える。



1997年1月、ドレスデン、ルカ教会での録音。














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Comment

芥川龍之介は怖いです - Yuniko

芥川龍之介は、中学校入学直後の国語で「トロッコ」を学習しました。まあ授業での読書で、国語の担任もやたらに文学的な知識をひけらかす人だったので、鼻白む面もあったのですが、参考作品として紹介された「蜜柑」「ピアノ」の不思議な清涼感・幸福感は強く印象に残りました。
で、『河童』の文庫本が学年全員に買え与えられ、「読んで、感想文を1週間後に提出」という宿題が出されました。クラスの人たちは「社会諷刺」「ユーモアあふれる」などといった感想を書いていたのですが、私は得体の知れない、それこそ「ぼんやりした」狂気のようなものを感じて、読み進むのも読書感想文を書くのに難儀しました。
大人になって大槻ケンジの本を読んだ時に、彼もやはり中学時代に担任に薦められて『河童』を読んで、「狂気」を感じたと書いていました。「そうか、オレだけじゃなかった」と、なんかホッとしたのを覚えています。
で、買い与えられた文庫本の『河童』の次に載っていたのが『或阿呆の一生』。『河童』の読後感が怖かったので読めずにいたのですが、齢50前にして勇気を出して読んでみようかなと思います。

コリン・ディヴィスはベルリオーズのスペシャリストとして知られていますね。クラシック音楽好きの(というかクラシック音楽を美しく鳴らすオーディオ好き)父が「フィリップス」レーベルを愛好していたため、ディヴィス(とベルナルト・ハイティンク)のレコードがよく実家で流れていました。こんな録音をしていたとは知らなかったのですが、曲目がとても興味深いです。
2013.03.03 Sun 00:42 [ Edit ]

怖さにハマりかけています。 - 管理人:芳野達司

Yunikoさん、こんにちは。

『河童』の文庫本が学年全員に買え与えられるなんてよいですね。。私は今読んでいる最中でして、おしゃる通り、ひたひたと迫りくる不気味な感覚を感じています。
集英社の文庫なのですが、これに収録されている「或旧友へ送る手記」と「或る阿呆の一生」を先に読みました。暗いけれども透明な感じがなんともいえません。

お父上はオーディオ好きなのですね。確かに、フィリップスの録音は独特の柔らかさがありますね。フィリップスとなると、ディヴィス、ハイティンク、あとマリナーも多くの録音を残していますね。デイヴィスはロンドンのオケとは多くのベルリオーズを残していますが、ドレスデンとのものは珍しいのじゃないかと思います。
2013.03.03 17:38

私が子どもの頃の音楽環境 - Yuniko

父はクラシック音楽も好きだったのですが、それ以上にオーディオ好きで、ステレオも各社の機械を組み合わせた自作、スピーカーも自作でした。
「一番よい音がするのがフィリップス」ということで、フィリップスのアーティストはよく聴かされました。アルフレッド・ブレンデルが好きでしたね。70年代後期にフィリップスから出たディヴィス、ハイティンク、マリナー、そしてブレンデルのレコードは、ほとんど買っていました。ただ、ディヴィスのストラヴィンスキーの3大バレエやブレンデルとアバドのシューマン:ピアノ協奏曲などの世評に高い名演は、なぜかスルーしてましたね。
ベートーヴェンのほとんどの交響曲、全ピアノ協奏曲初体験は、ハイティンク&ロンドン・フィルの全集でした。
一方で、父は「音が金属的で硬くうるさい」ということで、CBSとRCAを嫌っていました。だからブルーノ・ワルターやバーンスタインのレコードは家にはありませんでした。Deccaの音も「人工的でわざとらしい」と嫌っていましたね。
2013.03.04 Mon 06:46 [ Edit ]

「違いのわかる男」ですね。 - 管理人:芳野達司

Yunikoさん、こんにちは。

自作のステレオというのはスゴイですね。私なぞ、その辺で売っている安価な機器をむりやり組み合わせて使っています。自作なぞとても思いつきません。
フィリップスといえば、そう、アルフレッド・ブレンデルも代表的なアーティストですね。彼の実演を聴いたことがないのではっきりとはいえませんが、彼の厚くて重い響きはフィリップスの録音のおかげもあるのかもしれません。
70年代後期といえば、私も一番クラシック音楽を聴いていた時期です。ディヴィス、ハイティンク、マリナー、ブレンデルにはお世話になりました。ディヴィスのストラヴィンスキーの3大バレエはスルーしませんでした(笑)
CBSとRCAはいいものもあると思うのですが、ムラがあるかもしれませんね。Deccaの音は良くも悪くも人工的ですね。
2013.03.05 16:18

人生は地獄よりも地獄的 - yoshimi

こんばんは。
今まで読んだ芥川作品はあまり多くはありませんが、とても印象的だったのが『地獄変』と『奉教人の死』です。
晩年の作品は『侏儒の言葉』くらいしか読んでいなかったので、いくつか読んでみましたが、私小説風で精神的に重たいものが多いですね。
作家には、狂気から逃れて正気を保つために書く人と、書くことによって狂気に近づく人がいると、どこかで読んだことがあります。晩年の芥川は後者だったのかも知れません。

『或る阿呆の一生』を読んでいると、『侏儒の言葉』にある「人生は地獄よりも地獄的である。」という一文を思い出しました。
最期の頃の芥川にとっては(それとも若い頃から?)、それが真実だったのでしょう。

『河童』も初めて読みましたが、童話や『動物農場』のように擬人化された設定と筋立て自体は面白いです。
一見、社会風刺小説風ではありますが、芥川の伝記や評伝を読んでいると、『河童』の世界とオーバーラップする話がいろいろあります。
私には河童たちの世界がとてもリアルに感じられるのですが、それは彼らの行動や言葉を借りて、芥川が抱える現実の生活・精神的な苦しさをあちこちで吐露しているからではないかと思います。

最後の病院のシーンで、他の人には見えない(妄想の世界の)河童たちのことを楽しそうに話す主人公の姿は、一抹の物悲しさはありますが、でも幸せそうに思えてきます。
2013.03.09 Sat 00:44 URL [ Edit ]

ぼんやりした不安 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。

先日に芥川作品を紹介しましたが、あまり多くを読んでいません。晩年の作品をいくつか読んでいる程度です。『地獄変』も『奉教人の死』もまだ未読です。

いま読み進めているのが『侏儒の言葉』と『河童』です。これがなかなか進まない。確かに、私小説風で精神的に重たいですね。正気の人間が書いたものとはどうも思えない。けれどもなにか引き込まれるところがあるのです。それは今の私の精神状態がなにかそういうものを求めているからだと思えます。

『河童』、ゆっくりとですが、読んでいきたいと思います。
2013.03.09 17:56
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