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マゼールのビゼー「カルメン」

2008.12.13 - ビゼー

bizet

ビゼー「カルメン」 マゼール指揮ベルリン・ドイツ・オペラ、他


初めての屋形船で忘年会。この寒い時期に船などあるかと思ったけど、乗ってみれば面白い。
品川からお台場に出て、しばらく停泊。
周囲は、同じように夜景を楽しむ屋形船で大賑わい。


odaiba
お台場の海から見たフジテレビ(写りが悪くてよくわかりませんね)


それから隅田川を下って、勝鬨橋をくぐってふたたび品川へ。
どういうルートを通ってきたのか、いまひとつ腑に落ちない。海の地理は陸とはだいぶ違みたい。



マゼールの『カルメン』といえば、彼がフランス国立管を振った映画がある。タイトルロールのジュリア・ミゲネス・ジョンソンが、野性的香りをプンプンさせた魅力的な映像で、LDで何度か観たものだ。
今回聴いたのは、ベルリンドイツオペラとのもの。
こちらもいい演奏だ。
前奏曲からキレのある響きに魅せられる。
こちらの演奏のほうが、マゼールのケレン味がよりはっきり出ているように感じる。
もっともそれが強いのが、始まってすぐに登場する少年合唱。「タッタッタタララー、タララッタララッタッター」と、なんとワンパクで元気なことだろう。リズムを思い切って強調させて、いままさに悪戯にとりかかるようなやんちゃぶり。アンサンブルの荒らさが、元気の良さに拍車をかけているみたい。
それから1幕の最後のほうで歌われるカルメンとホセとのワルツ。テンポの変化は自在なのに、流れはごく自然。それについてゆく歌手は大変なのだろうと想像するが(もしくは歌手主導もありうるが…ここは指揮者ペースなのではないかと想像する)、うまい具合にぴったりと合っている。ワルツのリズムが伸びたり縮んだりずり上げたり、やりたい放題に聴こえるけど、呼吸に無理がないから違和感がない。
歌手では、まずモッフォ。フランス語特有の鼻にかかる声が色気たっぷり、こんなヒトに誘惑されたら、なにも考えずについていってしまうだろう。歌声そのものは可憐なので、下品にならない。
ドナートのミカエラもすばらしい。軽ろやかで情感たっぷりな歌が、ミカエラという女の薄幸さを浮き立たせていて、思わず同情してしまう。こういう女に誘われたら、尻尾を振ってついていってしまうに違いない。
カプッチッリのエスカミーリョ。これ以上、立派に歌うことが可能なのだろうか。圧倒的な声量と輝かしさ。彼が登場すると、空気が一変し、周囲の人物がサアッと道を譲るように感じる。「十戒」状態だ。
ドン・ホセを歌うコレッリもよい。張りがあって、表情が細やか、優柔不断な性格をうまく滲み出している。
モッフォもドナートも魅力的すぎて、どちらを選ぶかといわれれば男としてはおおいに困るところだ。うーん、これはドン・ホセではなくても迷ましい。
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団は、ことに男声の剛直な歌声に魅力があるが、ここでもすきっ腹に響き渡る強烈な歌声を聴かせてくれる。
歌手は色とりどりに、個性いっぱい歌いきっているのに全体のまとまりがよいのは、マゼールの引き締まったリードにあるように思う。


カルメン:アンナ・モッフォ
ドン・ホセ:フランコ・コレッリ
エスカミーリョ:ピエロ・カプッチッリ
ミカエラ:ヘレン・ドナート
スニガ:ジョゼ・ヴァン・ダム
モラレス:バリー・マクダニエル
フラスキータ:アーリーン・オジェー
メルセデス:ジャーヌ・ベルビエ
ダンカイロ:ジャン=クリストフ・ベノワ
レメンダート:カール=エルンスト・メルカー
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団&合唱団
シェーネベルク少年合唱団
ロリン・マゼール(指揮)

1970年、ベルリンでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは
冬が一日一日深まってきていますね〜。
忘年会、あるんですね、私の職場では有志以外のものはなくなってしまっています。私はきっといずれのものにも不参加だと思います(声もかかっていません、爆〜)。

ようやく、私も持っている演奏が出てきました、爆〜
(^_^)v

マゼールの「カルメン」この演奏は凄いですよね〜。私も初めて聴いたとき、ショックを受けました。ミカエラがあまりに上手いので、一体誰が歌っているのかと、ブックレットを見ました。ヘレン・ドナートさんだと分かり、なるほど、と〜。
それに、アンナ・モッフォさんもあんなに上手かったのかと〜。それにコレルリさんの熱唱、いずれをとっても一級品ですよね〜。
それに、マゼールの悪魔のような指揮ぶり、えええ、こんな曲だったの?と驚きました。前奏曲からぶっ飛んでいますよね。マゼールってこんな演奏もできるんですよね〜。お薦め盤は、マゼールの「トスカ」です。ニルソンさん、コレルリさん、ディースカウさんのトリオです〜。これもぶっ飛びですよ。

ミ(`w´彡)

2008.12.13 Sat 17:01 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

すっかり冬ですね。
会社の忘年会ですが、遠いし、寒そうだし行きたくなかったので、終わってホッとしました。ひと仕事こなしたような疲労が…。

マゼールのカルメン、rudolf2006さんも前に書かれていたし、ずっと興味を持っていまして今回ようやく聴きました。
予想以上にいいものでした。歌手がそれぞれ持ち味を出していてすばらしいです。それにマゼールの指揮がいきのいいこと。
いままで聴いたカルメンのなかでも、一番面白かったように思います。

マゼールの「トスカ」、これも気になっているのですよ。狙っています。
ところで、ようやく「プッチーニ全集」を入手しました。これはメータなのですね。まずはこちらを聴くことになりそうです。
2008.12.13 21:07

無題 - bitoku

吉田さん

お久しぶりです。

>初めての屋形船で忘年会

なんか粋な企画ですね。でも寒そう。

この「カルメン」聴いてみたいです。
マゼールの「カルメン」はLDのもなかなか良かったし。。。

>こんなヒトに誘惑されたら、なにも考えずについていってしまうだろう。

ちょっと待ってください!
私もついていきますから。<--なんのこっちゃ?(笑)

モッフォとコルレリのコンビも気になるところです。

「カルメン」の映像ではクライバーのDVDとレヴァインのLDを良く見ていました。それぞれ楽しめました。

でも「闘牛士の歌」で気に入った歌唱を聴いたためしがないので、この「カルメン」のエスカミーリョのピエロ・カプッチッリの歌はどうなんでしょうか?
2008.12.14 Sun 16:16 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

お久しぶりです、コメントありがとうございます。

屋形船の忘年会、停泊中は外に出られるのですが、寒かったです。なかなか面白かったのですが、こういう経験は、もうないかもしれません。

マゼールの「カルメン」、フランス国立管とのものもいいものですが、、ベルリンとの演奏もよかったです。
モッフォのカルメンと、ドナートのミカエラが…いや、とても素晴らしいです。
もし、誘われたら…。
一緒についていきましょう!(笑)
コルレリのホセも情感たっぷりで、聴かせます。
あと、驚いたのは、カプッチッリです。この劇のなかで、一番光っていたといってもいいくらいの歌でした。
あまりにパワーに、ちょっと浮いていたかも。
それくらい、圧倒的な歌でありました。
2008.12.14 20:58

無題 - narkejp

こんにちは。アンナ・モッフォとフランコ・コレルリが歌うマゼール指揮のベルリン・ドイツ・オペラ盤は、たしか1970年か71年ごろ、FM-fan誌の表紙を飾ったことがあると思います。妖艶なカルメンでした。たまたま当方もこのハイライト盤を聴いておりました。トラックバックいたします。
2008.12.14 Sun 20:37 URL [ Edit ]

Re:narkejpさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントとTBをありがとうございます。

ハイライト盤のジャケット、いいですね。モッフォでしょうか、いやまったくかっこいい。彼女の歌、実に色っぽくてステキでした。ないものねだりですが、もし映像があったら、たまらないものがあります。

しかし、この演奏、マゼールの指揮がピリッとしていていいですね。グロルの合唱、そして歌手陣も揃っています。
FM-fan、一時期愛読していました。このレコードが表紙を飾っていたのは知りませんでした。モッフォですから、見栄えしますよね。
2008.12.14 21:07

無題 - neoros2019

このレコードが新譜で出た1971年当時、FM東京で繰り返し鬼才マゼールのカルメンとして前奏曲の出だしが流されていました
カラヤン、ベーム、小澤、メータ、アバド録音やウィーン、ベルリンでの彼らの録音の数々が白熱を帯びていた頃です
その中でもマゼールは個性的、先鋭的表現で私を虜にしていました
その記念碑的結実がこのカルメン全曲ですよね
2008.12.17 Wed 10:15 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

マゼールとベルリンの「カルメン」、前から聴きたいと思っていましたが、予想以上にいいものです。
FM東京で流れていたのですね。推進力の強い演奏です。
リアルタイムではなく、あとから聴いたのわけですが、マゼールの60~70年代の演奏は実にいいですね。いや、それ以降の年代のものも好きなのですけど、彼の個性がはっきり出ていて、かつ環境が揃っていたのは昔のほうじゃないかとしみじみ思います。
2008.12.17 21:48
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