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アンセルメのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」

2009.04.29 - バルトーク

bartok

バルトーク 管弦楽曲集 アンセルメ指揮スイス・ロマンド管弦楽団


河合隼雄と谷川浩司の「『あるがまま』を受け入れる技術」を読む。
なんだか仕事のモチベーションがあがらない。
本をいろいろと漁っているが、これぞ、というものがなかなか見当たらない。
この本の目次をパラパラとめくってみて、面白そうなので買ってみたが、河合のこういう考えも、なんだか聞いたことがあるようなないような。
「レストランに行っておいしいものを食べるとか、旅行に行くとか、そういったすぐ実現可能な望みしか頭にないでしょう。もっと違うスケールで夢を持てないと、無気力から抜け出すことは難しいでしょうね。今では若い人たちだけではなく、あらゆる年代の人たちがそういう状態に陥っているんじゃないでしょうか」
高度経済成長のときの若者は、がんばればどんどん世の中はよくなっていくということが信じられていたし、実際に経済的に成長していったが、今の閉塞した世の中だと何を目指していいか難しい。
なかなか答えが出ないのだ。


アンセルメのバルトーク。
「管弦楽のための協奏曲」を聴くとき、クラシック音楽を聴き始めた頃を思い出す。
当時は毎年、音楽の友社のレコードアカデミー賞を気にしていた。受賞作イコールいいレコードと思い込んでいて、年末近くになると、受賞作品を予想することが楽しみだったものだ。
その頃、「春の祭典」とともに一時期毎年のように管弦楽部門で受賞していたのがバルトークのオケコンだった。ほとんど春の祭典とこの曲が独占したいたような気がする。管弦楽では、ほかに何の曲があったかな。思い出せない。
80年代初頭は、バルトークとストラビンスキーのメモリアルイヤーが続いたからということもあるのだろう。
記憶によれば、「オケコン」は立て続けに3回アカデミー賞を取っている。
オーマンディとフィラデルフィア、ショルティとシカゴ、それにドラティとコンセルトヘボウである。
どれもお国もの、しかも最高級のオーケストラビルダーである指揮者と名人オーケストラとの組み合わせだから、今から思えばその完成度の高さは容易に予想できる。だけど当時は新鮮なのだった。
今聴いてみると、華があるというかきらびやかというか、すごい演奏だ。オーマンディは少し遊び心があるものの、ショルティとドラティのは、大の大人が額に青筋立てて、邪魔ものを力づくでねじ伏せるような力技をみせる。それがまた水も漏らさぬものだから、ぐうの音もでない。ともかく大変な大演奏だが、こういうものは聴く側にも体力がいるので、今はそんなにしょっちゅうは聴かない。

前置きが長くなったが、アンセルメのバルトークは、彼らとは一線を画する。
節の切り方が短くてアッサリしているところはハンガリーコンビに似ているものの、仕上がりは全然違う。
ハンガリーコンビが高層ビルとすればアンセルメは繊細な木造建築。
ひとつひとつの音に木のような暖かみがあって、生き物のようにわさわさとうごめいている。
感覚が鋭敏な感じはブーレーズを思わせるが、色合いはカラっと明るくてほんのりあったかい。すみずみまで手作りの細やかさを感じる。
4楽章のトロンボーンのグリッサンドや、大ラスのリタルダンドは実にユニーク。こういうものを聴くと、アンセルメは19世紀生まれの指揮者なのだなあと、改めて気がつく。
ハイテク演奏に一矢を報いるような、味わい多彩な演奏である。

1956年10月、ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホールでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

大きな夢を抱くこと、大事だと思いますね〜
でも、これだけ先行き不安があっては、夢どころではないのかもしれませんね〜。大学に受かることくらいの夢では、ちょっと哀しいような気もしますね〜。
夢が持てる社会であって欲しいですね〜。

そうです、レコード芸術、音楽の友、など、色々とありましたよね〜。あの頃は新譜の嵐だったですよね〜。今は昔ですね〜。LP時代の方が新譜が多かったように思いますね〜。

アンセルメの録音、これもカスが非常に少ないですね〜。フランスもの、ロシアものも良いですし、意外にベトベン、ブラームスも良いです〜。
あれだけの録音の残せたのは、やはり売れたんでしょうね〜。アンセルメは耳も良く、それにリズム感も抜群であったように思います〜。

ミ(`w´彡)
2009.04.29 Wed 21:10 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

大きな夢。私も抱きたいものです。
ちょっと考えても、思いつかないので、今年の課題にしようかと^^
仰るとおり、大学に受かるとか、一流企業に受かるなんてことは、夢としては寂しいですね。その先が長いですからねー。

80年代初頭のレコード芸術、音楽の友はよく読んでいました。でも、アンセルメの評判はあまり芳しいものではなかったです。とくに、スイス・ロマンドは下手だと評判でした。
そのような批評を読んで以来、アンセルメを積極的に聴くことはなかったのですが、ここ最近、rudolf2006さんが記事にされていたので、久々に聴いてみたのです。
いいものだと思いました。
全然下手ということはありません。個々の技量もありますし、合奏もしっかりしています。
今まで聴いてこなかったのが、ちょっともったいないなと思います。
まだベートーヴェンやブラームスは聴いていませんが、これから機会があれば挑戦したいと思います。
2009.04.29 21:39
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