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ピノックのハイドン「ピアノ協奏曲ニ長調」

2011.01.10 - ハイドン
  
pi

トレヴァー・ピノック(指揮、チェンバロ) イングリッシュ・コンサート


江上剛の「非常銀行」を読む。時はバブル崩壊後。これは、リストラと巨大合併にひた走る銀行と、暗躍する総会屋との癒着に対して立ち向かう銀行員を描いた小説。銀行内の事務のやりとりや、役員の会話や、主人公の家族の描写が一本調子なので、奥行きは深いとはいえない。素人にもわかりやすく最後まで一気に読ませられるのは、それゆえかもしれない。総会屋のいやがらせのシーンは緊迫感がある。
著者が日本振興銀行の社長を昨年末に退任するとの話があったが、どうなったのだろう。執筆活動を再開してほしいものだ。


ピノックのハイドン。ピアノ協奏曲と書いたけれども、使っているのはチェンバロ。ピノックの弾き振りである。
「ピノックに駄作なし」とは三浦淳史の名言。妙に説得力がある。確かに、ピノックの演奏を聴いてガッカリした覚えはない。もちろん、全部を聴いているわけではないし、今後も全てを聴くことはたぶんないのだが、駄作はないだろうと思わされる何かがこの人にはあるように思うのだ。人徳、だろうか。
さて演奏は、キビキビとした覇気があって、なんとも勢いがよい。ノン・ヴィヴラートによる弦はみずみずしいし、ツルっとした質感がおいしい。チェンバロは雄弁でありつつ、細部も丁寧に彫り込まれていて、入念に仕上げられている。
どの部分もレベルが高いが、スピード感溢れる3楽章のロンドがとくに楽しい。

ピノックはバロックの演奏に古楽器を使い始めた、わりと初期の演奏家であるが、それを「過渡期」と評価する人がいる。後発で出てきたやり方をより進化したものと捉えているのだろう。この「過渡期」には、いささかの批判が込められているように感じないわけにはいかない。しかし、そもそも「完成」されたスタイルってなんなのだろう。 
ピノックのハイドンが過渡期であれば、「過渡期」、おおいにけっこうなのダ。


1984~85年、ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでの録音。
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Comment

無題 - 木曽のあばら屋

こんにちは。
ピノックのこのアルバム、初発売時国内盤では「ピノック・プロムナード・コンサート」
と題されていました。
肩の凝らないバロック作品を集めた楽しい一枚。

とても生き生きとした演奏で、
いまだにパッヘルベルのカノンもパーセルのシャコンヌもハイドンのチェンバロ協奏曲も
このCDの演奏が一番好きだったりします。

じつは「ゴルトベルク変奏曲」も、ピノックのCDが一番好きだったりするんですよね、私は。
2011.01.10 Mon 21:16 URL [ Edit ]

Re:木曽のあばら屋さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

ピノックに駄作はない、と30年来信じていますので、このCDも期待しましたが、サスガの出来でございます。
パッヘルベルの「カノン」は録音が多いので、なかなか新味を出しにくいかと思っていましたが、ピノックの演奏には冒頭から引き込まれました。あのチェンバロは、よいですねぇ。
このハイドンも素晴らしくて元気が出ます。
「ゴルトベルク」もよいですか。聴きたいと思います。
2011.01.10 21:54

無題 - yoshimi

ピノックのハイドン、元気な男の子が走り回っているみたいで、面白い雰囲気ですね。
ピアノの演奏だと、楽器の音質やタッチの違いもあるのか、女性的というか、多少柔らかさがある演奏が多いように思います。

ピノックは一昨年くらいに聴き始めて、バッハのパルティータの新盤、ヴァイオリンソナタ、それに協奏曲全集のCDは持ってます。
特に、チェンバロのCDを初めて買ったのがピノックのパルティータだったので、よく覚えてます。
ピノックのCDを聴いたおかげで、チェンバロへの苦手意識もすっかり解消して、最近はバッハを聴くときは、チェンバロとピアノと半々くらいになっていますね。
2011.01.12 Wed 00:51 URL [ Edit ]

Re:yoshimiさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ピノックのハイドン、躍動感たっぷりで楽しいですね。ピノックは80年代に登場したころ、けっこう多くの録音をしていたように記憶します。
その中に、バッハの「4つのチェンバロのための協奏曲」とか「5つの」だかがあって、当時近くにあった図書館で借りて聴いたものでした。そのころ、故・三浦淳史さんは「ピノックならばチェンバロがうるさくない」というようなことを言っていました。でも実際に聴いてみると、さすがにチェンバロが5台だと、けっこう騒々しかったなあ、なんて感じたことをピノックを聴くと思い出すのです。
2011.01.12 22:18
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