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悪霊2、アバド、"春の祭典"

2012.04.30 - ストラヴィンスキー

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ストラヴィンスキ「春の祭典」 アバド指揮ロンドン交響楽団



ドストエフスキー(亀山郁夫訳)の「悪霊」第2部を読む。
第1部を読み終えてから、1年経ってしもうた。あのときはかなり時間をかけて読んだので、内容はわりと覚えていた。それに、本書には第1部のまとめというか復習が巻末に用意されているので、それを読むと繋がりがよりはっきりした。
第2部は、いわゆる「悪霊」とされるところのふたりの人物、すなわちニコライ・スタヴローギンとピョートル・ヴェルホヴェンスキーの立ち回りを中心に展開される。
長大であるし、謎めいた記述が多いため、全容をここにわかりやすく書くことは、今のワタシの能力ではできない。
よって今回は、物語の核心のひとつを象徴する文章を引用することにとどめる。
ピョートルがスタヴローギンに対して述べた「スパイ制度論」から。

「社会の構成員の個人個人が、たがいに相手を監視しあって、密告する義務を負う。個人は全体に属し、全体は個人に属する。全員が奴隷で、奴隷をいう点で平等だ。極端な場合には、中傷、殺人も許される、でも、大切なのは平等。まず手はじめに、教育、科学、才能などのレベルが引き下げられる。科学や才能の高いレベルは高い能力があって可能になるが、そんな高い能力などは不要! 高い能力を持った人間たちは、つねに権力をにぎろうとし、暴君だった」。








アバドの「春の祭典」を聴く。
この演奏を聴くのはCDでは初めてなので、じつに久しぶり。
70年代半ばの録音ということは、「ハルサイ」激戦時代。それをかいくぐってきた懐かしの演奏である。

スマートなフォームがなかなか恰好いいし、ときおり聴き覚えのないフレーズが明瞭に鳴っていてハッとするし、そこそこ迫力もある。
ただ、星の数ほどあるこの曲には、いい録音が多い。

若々しさがみなぎるティルソン・トーマス/ボストンやメータ/ロサンゼルス、シャイー/クリーヴランド。スッキリと見晴らしのよいブーレーズ/クリーヴランド(旧盤)。怒涛の臨場感がハンパでないカラヤン/ベルリン(1978ライヴ)。オケの高い技量をまざまざとみせつけるショルティ/シカゴとムーティ/フィラデルフィア。原始主義的な荒々しさがあるスイトナー/ドレスデンとゲルギエフ/キーロフ。マイルドな味わいのマゼール/ウイーン。手だれの風格を感じさせるドラティ/デトロイト、等々。

それらを知ってしまうとこの演奏、相対的には、いささか分が悪い。対抗馬が多すぎる。
単体で聴けばじゅうぶんにいい演奏であるが、これじゃなければならないといった要素は、今となっては薄いと思う。


1975年2月、ロンドンでの録音。
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Comment

無題 - Yuniko

本当にお久しぶりです。仕事と家庭内での出来事が多く、ご無沙汰しておりました。
アバド&ロンドン響の「春の祭典」。左右対称のジャケットが印象的でした。
クラシック音楽を聴き始めの中学2年生の頃、やはりクラシック好きの父が「ステレオ芸術」という雑誌を毎号購入していました。忘れもしない1978年の2月号が「春の祭典・名盤を探る」という座談会でした。「春の祭典」の古今東西すべての録音を評論家3氏がすべて聴き倒し、すべて語り倒すという企画でした。
(この「名曲聴き倒し&語り倒し」はステレオ芸術の名物企画で、この他にも「運命語り倒し」「第9語り倒し」などがありました)
その中で、発売されたばかりのカラヤン&ベルリンpoの「春の祭典」が、「ロマンチシズムの菌を持っている」「これはもう選外」「ワースト1!」「絶対に買ってはいけない」「手にも触れないこと」などと悪罵の限りを尽くされておとされていました。それをよんでしまったがために、私の脳には「カラヤンのハルサイ=最低演奏」というレッテルがいつの間にか貼られてしまっていました。
でも大人になって聴いてみると、カラヤンの「春の祭典」とてもいいです。文中にも上げられている1978年ライヴも豪快かつ艶めかしくていいですよね。
私のお気に入りは、切れ味鋭いドラティ&デトロイト響と妖艶なマゼール&ウィーンpoです。
本当に「春の祭典」は、名盤目白押しですね。
2012.05.02 Wed 00:48 [ Edit ]

Yunikoさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

お久しぶりです。お元気なご様子、なによりです。
「春の祭典」といえば、思い出すことがあります。
C・デイヴィスがコンセルトヘボウを振ったレコードがFMで放送された時のことです。その番組(確か柴田南雄が解説だったかと)で「春のきざしと乙女たちの踊り」を、いろいろな指揮者で聴き比べしていたのです。ブーレーズやらメータやら、そしてアバドなどなど。あれは楽しかった。あの番組でこの曲を好きになったものです。

「ステレオ芸術」は、昔にたまーに読んでいました。どちらかといえば「レコード芸術」派だったので。
「春の祭典・名盤を探る」座談会、楽しそうです。
カラヤンのセッション録音は、昔に聴いたとき、確かにいまひとつ迫力にかけると思いました。それにしても「手に触れないこと」とは手厳しい! 今聴いたら、また違う感想を持つかもしれません。
ドラティ&デトロイト響とマゼール&ウィーンpoは欠かせませんね!!
2012.05.02 17:58

「ステ芸」の「春の祭典・名盤を探る」をネット上に再現 - Yuniko

「ステレオ芸術」の「春の祭典・名盤を探る」。記憶をもとにネット上で再現してみます。
評者は、慶大教授の鍵谷幸信・作曲家の諸井誠・フリーの録音技師・若林駿介。いずれ劣らぬ「ハルサイ好き」だということでした。

まずは、激賞組
デイヴィス&コンセルトヘボウ→「すごい春の祭典じゃないですか!」(鍵谷)=3氏ともこれをイチ押ししてました。
バーンスタイン&ロンドン響、ブレーズ&クリーヴランド、ショルティ&シカゴ響

続いて、けなし組
カラヤン&ベルリンpo→評価は既出。3氏ともカラヤン盤をワーストワンに選出。若林氏だけはカラヤン盤を少し擁護してたけど、それでも「第2部冒頭でオケがバリバリ鳴る所なんて変」
メータ&ロスpo→「これを誉めてる人もいるのね。どこがいいのかちっとも分かんないけど」(鍵谷)
モントゥー&オケは忘れました→「モントゥーは初演者だというけど、もうどうでもいいから音だけ鳴らせということで、メチャクチャだったらしいね」
ドラティ&オケは忘れたけどデトロイトではない→「軽くスイングするところがおかしい」「軽戦車みたい」
ストラヴィンスキー&コロンビア響→「春の祭典を聞き込んで、よく分かった人が聴いて初めてためになる」(諸井)

評価保留
マゼール&ウィーンpo→「ウィーンpoがこの曲をやったというのは、ある種の事件と思うんだ」

こんなところでしたね。34年も前の記事ですが、誉めた評価よりもけなした評価の方がいまだによく印象に残っていることに笑ってしまいました。
2012.05.02 Wed 23:22 [ Edit ]

けなし話は記憶に残りますよね - 管理人:芳野達司

面白い企画をご紹介いただき、ありがとうございます。

鍵谷さんは存じませんが、後者おふたりは「ハルサイ好き」という感じがします。
デイヴィス盤は、当時の最新だった(はず)。あれは重厚でいい演奏でした。確か、A面の最後に編集ミスがあることでも話題になったように記憶します。
バーンスタイン&ロンドン響、あとオーマンディのものがあるらしいのですが、いずれも聴いたことがないのです。聴いてみたい!

あと個人的に「けなし」をしてしまうと・・・
ストラヴィンスキーの自演は同感ですね。パンチが足りない。マルケヴィチとフィルハーモニア管のは有名なものですが、これはなにかピンときませんでした。ブーレーズが最初にやったフランス放送管とのものは、後年にいれたものと比べてしまうと、もうひとつインパクトに欠けるかと。モントウー盤はオケは忘れましたが、聴いたことは覚えているものの、内容は忘却のかなたに・・・。
あとレコードではないのですが、ハイティンクがベルリン・フィルとやったライヴ(90年代だったかな)は、もっさりしていて気に入りませんでした。なので彼が振った「ハルサイ」の録音は聴く気がしません。

失礼しました。
2012.05.03 07:36

マンガ悪霊 - neoros2019

イーストプレスという出版会社から罪罰、カラマーゾフ、オーウェルの1984、果ては共産党宣言、ツァラトゥストラ、ファウストなどの文庫マンガ版が出ています
そのほとんどが立ち読みで充分というかイメージ的には酷いと感じたりクドイと感じたり様々ですね
私にとって古くより悪霊が少し思い入れが強い作品だったので購入してしまいましたが、あまりに一面的で呆れるというか笑ってしまいました
もっとも食い足りないのがピョートルの卑劣さの表現で、原作ではこれ以上考えにくい程の人間の弱い部分を象徴するような薄汚い人格を徹底的に巧妙に描いててみせますがマンガではキレたチンピラの親玉ぐらいにしか感じられません
今でも2年に1回くらい暇な時、部分読みする唯一の作品といっても良いのがこの「悪霊」です
2012.05.07 Mon 12:04 [ Edit ]

「悪霊3」に突入しました - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、こんにちは。

検査入院していたため、返答が遅れまして恐縮です。
文庫でいろいろな作品の漫画が出ていますね。私が行く本屋では漫画にビニール袋に梱包されているので、立ち読みはしたことがありません。ですが、ちょっと、気になっていたのです。

「簡単に読める」という観点で漫画化すると、表面的になってしまうというところ、想像できます。できるだけ原作に忠実に再現すれば、漫画でも読む価値はあるのかもしれません。そうすると、かなりな大作になるのでしょうが。

まだ、はっきりとはわからないのですが、ピョートルという人間は、とても多面的なものじゃないかと思います。いわゆる「悪役」という言葉ではあらわせませないような。
これからのピョートルとスタヴローギンが楽しみです。変な言い方ですけど。
2012.05.10 17:02
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