忍者ブログ

乃木希典、アルゲリッチ、シューマン"ピアノ・ソナタ2番"

2012.05.03 - シューマン

sc

シューマン ピアノ・ソナタ2番 アルゲリッチ(Pf)



福田和也の「乃木希典」を読む。
著者が乃木に対する思いは、以下の文章によってあらわされていると思う。

「有能であることは、そんなにたいしたことなのだろうか。どうでもいいような気もしないでもない」。
「責任のある大人は、自分が疑っていてもある大義をいいつのる責任を負う。しかしまた、根のところではそれが仮象だと弁えていなければならない。乃木と云う人は、自分を、そのために死ぬことができる何ものかに作り上げようとした。死処に赴かしめる、徳目の権化になろうとした」。

これはある意味で、司馬史観に対抗する考えだと思う。
「坂の上の雲」の印象がなにしろ強いので(あなたもそうだろうか)、乃木は「無能」だとする思いが根をはっている。
そんななか、乃木が見出した「情」のようなものの価値をすくいあげているところに、本書の値打ちがある。

「坂の上の雲」においては過激なまでに禁欲的な人物として描かれていたが、ドイツ留学前までは放蕩三昧の生活だったという。どんな理由で変わったのか、ここでは明らかにされていない。








アルゲリッチのシューマンを聴く。
めくるめくテンポで駆け抜けるピアノ。
音そのものは、特段に美しいというほどではない。けれど、疾風のような音の連なりからは、シューマンの霊感めいたものが、じわじわとにじみ出ている。

シューマンはこのソナタを作るにあたって、シューベルトのソナタのように、全体の論理的な構成力を意識して踏まえたという。ソナタという形式であるから当然かもしれない。
けれども、出てくるメロディー、ハーモニーの感触は、彼の標題つきの小品に通じるものだ。
幻想味があって、突飛で、はかない。

アルゲリッチはわりとシューマンの録音が多いので、得意としているのかもしれない。いままで何曲か聴いた感じでは、どれも独特のインスピレーションに富んでいてステキだ。


1971年6月、ミュンヘンでの録音。
PR
   Comment(0)    ▲ENTRY-TOP

Comment

コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
カッチェン、フロマン、ブラームス"ピアノ協奏曲2番" from:Yoshimi
-11/16(Thu) -
フルニエ、フィルクスニー、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-03/18(Sat) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:老究の散策クラシック限定篇
-02/20(Mon) -
ゼルキン、オーマンディ、ブラームス"1番" from:“スケルツォ倶楽部”発起人
-02/20(Mon) -
古典四重奏団、ベートーヴェン、15,13"大フーガ" from:老究の散策クラシック限定篇
-10/30(Sun) -
最新TB
カテゴリー