佐々木常夫の「働く君に贈る25の言葉」を読む。
「運命というものは。必ず幸と不幸を君にもたらします。しかも、幸と不幸がどのようなめぐり合わせで訪れるのか、誰にもわかりません。ときには、試練ばかり訪れる時期もあるかもしれない。だけど、何があっても自分を見捨てないでほしい。もしも、その運命から逃げても、そこには新たな運命が待ち受けています。」
これは、筆者の甥を入社したての若者とみなして、彼に宛てた手紙調で書かれた自己啓発書。
若者向けの本でありながら、私のようなオッサンが読んで、改めて気を引き締めたくなる箇所がある。そのひとつが上の記述。
ところで、この筆者は経歴が凄い。
1944年に秋田で生まれ、東京大学経済学部を卒業し東レに入社。結婚して子供をもうけるが長男は自閉症。課長に就任した1984年に、奥さんが肝臓病を患い入退院を繰り返し、その自責で鬱病にかかり3度の自殺未遂をはかる。その間、3人の子供を養うため、究極の効率術を身につけて毎日定時に会社をあがり、家事をすべてこなした。と同時に会社での業績は抜群であり、2003年には東レ経営研究所社長となる。
スーパーマンである。
彼の本は何冊か読んだ。柔和な語り口が魅力的。でも、いつも本文よりも著者経歴に感心させられる。


イストミンのピアノ、ワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏で、シューマンのピアノ協奏曲を聴く。
イストミンのシューマンは、このボックスで1曲のみ。これは彼らしい、瑞々しく端正な演奏。揺らぎのないスピードはおそらくインテンポと思われ、ケレン味といったものがいっさいない。清流のようなサラリとした吟醸酒の味わい。
ワルターのオーケストラもピアノにぴったりと寄り添い、精確でイキがいい。それにしても、ワルターのシューマンこそ、珍しいのじゃないだろうか。大昔の録音はあるようだが、戦後に交響曲の録音を残しているのだろうか? 聴いたことがない。
でも聴いてみると、違和感はない。木管楽器を前面に浮き立たせているから立体感を感じる。とくにフルートはキリっと冴えている。
こういう演奏だからこそ、シューマンの抒情がもっとも映える。粒だった音のひとつひとつ、そして行間から淡いセンチメントが立ちのぼる。
1960年1月、ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホールでの録音。
隠れ家。
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