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コルトーとフリッチャイのシューマン「ピアノ協奏曲」

2008.05.24 - シューマン

cortot

シューマン ピアノ協奏曲 コルトー(Pf) フリッチャイ指揮ベルリン放送交響楽団


シューマンのピアノ協奏曲を、感傷的に演奏しようと思えば、いくらでも甘く味付けできるだろう。
メランコリックな風情が濃厚に漂う作品である。
ただ、1級といわれるピアニストは、ちょっと甘いかな、というところで留めて、全体的にはビターな風味に仕上げることが多いようである。
リヒテルしかり、ミケランジェリしかり、ルービンシュタインもそうである。彼らの演奏は、フォルムがしっかりとした、いい演奏である。そこには、大人の作法を感じる。
ピアニストという人種が、普通の勤め人と比べて変人が多いとはいうものの、いざ弾きはじめたら、相応の枠組みの中のディテイルで勝負していくものである。
それが聴き手にとっては安心なのである。
でも、コルトーのこの演奏は違う。
なんでもありである。
甘いとか辛いとか、遅いとか速いとかいうことを突き抜けて、神聖とすらいえるぐらい高みにまで達した弾きぶりであるといえる。
テンポの自在な揺れ、そしてこの上なく豊満な音色は、全て、感傷的なものへの熱い情熱に注がれている。
ヨーロッパのお菓子みたいに、脳がしびれるくらいに甘い。
すばらしいのは、感傷的でなにが悪いかと開き直った態度が、毅然としていることだ。まるで後光がさしているようだ。
この曲のレコード史に輝く記念碑的変態演奏として忘れがたい1枚である。
ときにコルトー74歳。なにをやっても許される年頃かと思ったら、意外に若い。
ミスタッチは随所にあるものの、コルトーにとってそれは今に始まったことではないので、気にすることはない。
清濁併せもつこの演奏からは、ジンセイの悲哀を存分に味わうことができる。
忘れてならないのは、コルトーのピアノに熱くこたえるフリッチャイだ。奔放すぎるピアノに見事についていっている。これは名人芸である。
この演奏に、クラシック音楽を聴くひとつの醍醐味を感じないわけにいかないのだ。

1951年、ベルリンでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

コルトーのシューマン
まったくの未聴です、いつものように

>この曲のレコード史に輝く記念碑的変態演奏とし>て忘れがたい1枚である

この表現、良いですね、吉田さんならではの表現ですね、「記念碑的変態演奏」う~~ん、何となく想像ができるような気もするのですが、どこまで弄りまくっているのか、想像を絶するものかもしれませんね~。

シューマンのコンチェルトは、ゼルキン師のものを愛聴しております。規格的な演奏だけでなく、自由な演奏があっても良いのかもしれませんし、ひょととすると、スタンダードな演奏もできた上で(?)、弄りまくっているのかもしれませんね
フリッチャイという指揮者、ブログを読んでいますと、意外と評価が高いですよね。そういうピアノに合わせられるとは、凄い能力ですよね~

ミ(`w´)彡 
2008.05.24 Sat 11:08 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

コルトーのシューマンについては、いろいろ評判だけは聴いていました。実際に聴いてみると、やはり評判通りのキワモノ的演奏でした。
こういうことをやってもいいのか? ということを平気でやっちゃってます。最近聴いた音楽の中で、これは忘れることの出来ない演奏になりそうです。フリッチャイの丹精こめた伴奏ぶりにも泣かせられます。

そういえば、ゼルキン師のシューマンをきいたことがないのです。オケはフィラデルフィアでしたか? 
廉価盤がすくないのでなかなか聴けていませんが、これも聴いてみたいですねえ。
2008.05.24 11:42

無題 - bitoku

吉田さん、またまたこんにちは。

>ただ、1級といわれるピアニストは、ちょっと甘いかな、というところで留めて、全体的にはビターな風味に仕上げることが多いようである。

>ヨーロッパのお菓子みたいに、脳がしびれるくらいに甘い。

美味い!
いや、旨い。

いやいや”巧い”カナ。(笑)

ホントに洋菓子みたいですよね。甘さがしつこくて思わず日本茶が飲みたくなる。(笑)


>すばらしいのは、感傷的でなにが悪いかと開き直った態度が、毅然としていることだ。まるで後光がさしているようだ。

やっちゃあいけない事を平然とやってしまうとは矢張り只者ではないですね。
多分、確信犯でしょう。(笑)

コルトーは技巧が危なっかしいので、あまり聴かないので勉強不足です。
良くも悪くもフランス人らしいピアニストに思います。フランスの香りがしてきそうな感じ。



2008.05.24 Sat 18:16 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

またまた、コメントありがとうございます。

コルトーのこの演奏、すごいですね。
コーホー氏が薦めているということだったので、一抹の不安があったのですが、これはヒットでした。いやいや、ホームランでありました。

なんでもやり放題。こいいう演奏、今はありませんね。
今からみればほんとうにめちゃくちゃやっているんですけど、絵になるところがあるのです。
技巧的にも、ハッキリ言って上手とは言いがたいのですが、それもまた味になっている。名人芸です。
ピアノもすごいけれど、フリッチャイの指揮がまたいいのです。
このCDには感服しました。
明日は、コルトーの違う演奏を聴いてみようと思います。
2008.05.24 21:28

神聖 つまりハインリッヒです。 - Kansojin

管理人様。
シューマンのこのコンチェルトの文学的なテーマは、クララに対しての愛情です。どーしーららー♪と言うテーマは、ドイツ音名ではCHAAだから、クララから取られています。でも、シューマンの文学的、心理的な比重に比して、音楽的には展開力に乏しいです。最初から無理があり、ロマン派のピアノコンチェルトで、これ程テーマに魅力のない物は無いと思います。そこを、何とか展開して、30分程度の作品に仕上げているのだと思います。第三楽章の最初は、クララのテーマを上昇形にしたものですが、三音ではさすがに厳しいので、長くされています。それでも厳しくて、生では度忘れするピアニストは多いですよ。
作曲技法の冴えと言うのか、病的なまでの執着と言うのか・・・。
コルトーはこれらすべてを、解決して見せます。欠点を治すと言うのは、普通の発想で、一流でもそんな物なんです。コルトーは、欠点を長所に変えるのです。
あれだけテンポが変わるのは、数学的空間として考えると、座標軸が歪んでいるのです。当然音の座標も、楽譜通りの所には無くなり、心無い耳にはミスタッチに聴こえるのですね。あれは、音楽的なのです。何らかの行列式が掛けられ、相対性理論のように、空間が歪んでいる。
ユークリッド空間しか見えない人には、歪んだ空間で起こっている音楽的内容を聴覚として感じる事は不可能です。

コルトーは、二十世紀前半の音楽的傑物の一人です。ドビュッシー、シェーンベルク、フルトベングラー、クナッパーツブッシュなどと並ぶと自分は思っています。
新古典主義に属する人たちは、彼ら表現主義の反響で有って、音楽の本質ではないと思っています。
2017.06.02 Fri 14:09 [ Edit ]

実に深いですね。 - 管理人:芳野達司

Kansojinさん、こんにちは。
とても詳しい解説をありがとうございます。
シューマンのピアノ協奏曲は好きな曲で、おっしゃるように、途中で度忘れするくらいに有機的なまとまりにはいまひとつ欠けたものだというものの、作品の魅力は他に代え難いものがあります。
コントーのテンポの揺れは、空間の座標軸が歪んでいるからですか。そのあたり、ちょっと難しくてよくわかりませんでしたが、コルトーのよさはわかるような気がします。彼のショパンも好きです。ちょっと現代にはいないタイプのピアニストですね。
2017.06.02 18:11
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