シューマン ピアノ協奏曲 コルトー(Pf) ランドン・ロナルド指揮ロンドン・フィル浅田次郎の「昭和侠盗伝 天切り松闇がたり」を読む。「天切り松」シリーズの4作目である。
前作から時代を経て、今回は第二次世界大戦前夜の昭和を舞台に、粋な盗人の技が光る。
今と同じかそれ以上に外国かぶれだったという東京の、モダンな銀座の雰囲気がよく伝わってくる。
ビーフステーキや甘いコーヒーがいかにもおいしそうだ。
「天きり松」の名の由来がここに登場するが、その名づけ親は、並行して読んでいる「坂の上の雲」の主要人物であった。時代もジャンルも違うふたつの作品が、ひとりの実在人物のフィクションによって交錯する面白さ。
ストーリーの切れ味は前作までのほうがよかった気がするが、あいかわらず登場人物の描写がきわだっていて一気に読ませられる。早くも次回作が待ち遠しい。
昨日に引き続き、コルトーのシューマンを聴く。
コルトーがスタジオで3回録音したうちの、これは最後のものである。
コルトー、57歳。
ときおり、テンポの振り幅はやや大きくなるところあるものの、全体のフォルムはかっちりとしていてくずれはない。端正なシューマンといっていい。
端正ななかに、ほのかな詩情がにじみでていて、思わず呑みたくなる。
3楽章の冒頭での、じっくりタメの入ったところは、かすかに1951年の演奏を予感させるが、全体的にはもうまったく違う音楽といっていい。
フリッチャイとの演奏は、ライヴということもあるし、この演奏から17年を経ている。
この間になにがあったのだろう。第2次世界大戦での政治的活動を咎められて不遇だった時期があったらしいが、そのことが関係するのか。
ロナルド盤 フリッチャイ盤
Ⅰ 14'58 16'14
Ⅱ 04'59 05'03
Ⅲ 10'06 12'02
1934年10月、ロンドンでの録音。
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