クリストフ・プレガルディエンのテノール、スタイアーのフォルテ・ピアノによる演奏で、シューベルト「白鳥の歌」からハイネの詩による歌を聴きました(1993年11-12月、ハム、マキシミリアン・ザールでの録音)。
「白鳥の歌」は、レルシュタープ、ハイネ、ザイドルの三人による詩から曲をつけた歌曲集で、ハイネ詩による曲に陰影が濃いものが多いように感じます。
ハイネだけを抜き取ったコンサートに足を運んだことがあります。1989年5月、F=ディースカウのリーダー・アーベント。のっけから始まった「アトラス」の、地響きのようなピアノと雄渾が煮えたぎるバリトンは衝撃で、たぶん一生忘れないでしょう。
当ディスクは、店頭で手にしたときにそのコンサートを思い出して購入した次第。
こちらはテノールによるもので、ドイツ・リートはどちらかと言えばこちらを好みます。軽やかな味わいが心地よいから。
プレガルディエンの歌唱は、鄙びたフォルテ・ピアノと相まって、瑞々しく爽やか。「アトラス」はディースカウの重心の低い迫力の代わりに、精気に満ちた伸びやかさがあって一興。「海辺にて」は、そういった歌いまわしが6曲中最も合っているようで、気に入りました。
それにしても、「白鳥の歌」は「影法師」で終結すると、全曲(「鳩の便り」がラスト)を聴くのとは全く違う後味になるところが面白い。
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