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"嘘みたいな本当の話"、ルプー、シューベルト"20番"

2013.12.15 - シューベルト


ma




内田樹と高橋源一郎が編集した「嘘みたいな本当の話」を読む。

これは、ポール・オースターがアメリカのラジオで始めた、聴取者参加型番組の日本版。作り話のような実話のセレクションである。

気に入ったのはこれ。
「私が大学生だった頃、同じ研究室にMさんというおっとりとした大学院生の先輩がいた。あとになって楽天のM社長のお兄さんと知った。
隣の研究室にいた後輩のO君はノーベル賞受賞者の息子さんだった。
そして一緒に昆虫の研究をしていたK君は、JRに就職し、畑違いのところに行ったなあと思っていたら、旧国鉄総裁の孫だった。
そんなスゲー人たちに囲まれて学生時代を過ごした私はいま、四十歳を過ぎてフリーターである」。

ほのぼのしている。









ルプーのピアノで、シューベルトのピアノ・ソナタ20番を聴く。

ルプーは、強弱の微妙な変化をつけるのがうまいピアニストだと思う。それをはっきり感じたのは、シューベルトの即興曲を聴いたときだ。
当時はこの曲をいろいろ聴き比べた。ブレンデル、ツィメルマン、ホロヴィッツ、シュナーベル、シフなど。どれもそれぞれ違う特長があって面白さは尽きなかったが、ルプーの弱音に対する配慮も強く印象に残った。

この20番については、こころもち速いテンポでもって弾き進めてゆく。随所に強弱の変化をつけているが、意識しないとわからないくらい微細で自然だ。わざとらしさとか、あざとさを徹底的に排除した、誠実な演奏である。
全体を通して、ストレート主体の演奏。だからこそ、終楽章の憂愁が映える。

彼はデビュー直後に「千人にひとりのリリシスト」と言われていた。こう聞くと、なんだかヤワなイメージを持ってしまう。だが、このシューベルト(あるいはシューマンやベートーヴェン)を聴く限り、王道をまっすぐ目指したスタイルを保持するピアニストだと思う。



ラドゥ・ルプー(ピアノ)
 

1975年8月、ロンドンでの録音。








ma













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Comment

今のルプーなら - yoshimi

こんばんは。
ルプーのCDは、クラシックを聴き始めた頃にかなり集めました。
ブラームスの小品集が特に好きで、これは長い間、私の定番でした。
それに、ベートーヴェンのロマンティックな「ピアノ協奏曲第3番」やファンタスティックな「月光ソナタ」もよく聴きました。
リリシズムといっても、しなしなしたところはないですね。

シューベルトはそれほど聴かなかったのですが、即興曲を聴いてみると、くぐもった弱音の淡い色彩感とニュアンスが独特ですね。
柔らかいタッチとやや粘っこいフレージングで、ブレンデルのような洗練されたシューベルトとは違って、私にはどちらかというと野性味があるというか、生命力を感じさせるというか、肌にじりじり触れてくるようなものを感じます。(これは私独特の感覚でしょうけど)

ルプーも随分お年になりましたから、若い頃とは随分弾き方も変わっているでしょう。今のルプーを聴いてみたいですね。
実演でしか聴けないというのは残念ですが、たぶん主義を変えることなく、録音することはもうないような気がします。
2013.12.20 Fri 22:36 URL [ Edit ]

そうでしたか! - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲はメータとの全集がありましたか。3番は聴きました。瑞々しくていい演奏だったと記憶します。
シューベルトの即興曲は、今は手元にないのですが、長らく記憶に残る演奏です。ツィメルマンやブレンデルと共に。
肌にじりじり触れてくるようなもの、なるほど。たしかにリリシストというよりは、もっと生々しい肌触りなように感じますね。

ルプーは、録音を辞めたのですか。知りませんでした。どおりで最近聞かないと思ったら。となると余計に聴きたくなります。90年半ば頃に、東京交響楽団とやったシューマンは、とてもいい演奏だったので、それもあって少し注目しているソリストです。
今のルプー、聴いてみたいですね。
2013.12.21 17:58
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