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ロストロポーヴィチのR・コルサコフ「シェエラザード」

2007.05.01 - R・コルサコフ

ロストロ

リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」 ロストロポーヴィチ指揮パリ管弦楽団


勝手にロシア5人組の日

ロシアの5人組というのは面白いネーミングだ。コミックバンドとしても通用しそうな感じである。
当然、日本だけではなく世界的に通用する言葉なのだろう。すごく濃い顔ぶれだと思うのは、みんな酒が強そうだからだろうか。その中のひとりであるムソルグスキーは事実アルコール依存症であったといわれているから、ホンモノである。
国民学派といわれるくらいなので、西洋音楽とはいっても、ロシアという地域に割と密着した音楽作りをしていたということで、西欧寄りであったチャイコフスキーはこの仲間に入っていない。
野球でいえば、コンスタントには打たないけれども、チャンスには強い癖のあるバッターを6番から8番に集めたような顔ぶれだ。
なかでは「展覧会の絵」とか「ボリス・ゴドノフ」を作ったムソルグスキーがやはりアル中の強さを発揮して1歩リードしている感があるが、次にくるのは、ボロディンと激しく争いながらも「シェエラザード」の圧倒的知名度でリムスキー・コルサコフかどうか。若い頃に海軍兵だったという先入観もあるが、このヒトも酒が強そうである。同じ五人組の先輩であるバラキレフの助手を務めていたらしい。

私はけっこう「シェエラザード」が好きである。生意気盛りの若かりし頃は、評論家の意見を鵜呑みにして、「シェエラザードなんて通俗的ではないか」、などとのたまって、あまり聴いているようなそぶりは見せなかったが、このところよく聴いているし、実は前からひそかに聴いていた。
ひそかにしなくてもいいのだけど。
いろいろな演奏を聴いてきたけど、印象に残るのはロストロポーヴィチがパリ管を振ったものと、マゼール/クリーヴランドの演奏だ。マゼール盤は、後年にベルリン・フィルとやったものも良くて、むしろこちらはオーソドックスな演奏としてとても完成度が高いのだが、クリーヴランドとのものは非常に独特だった。贅肉どころか肉そのものがない、ガイコツ人間のようにスリムな音楽で、その異常なまでの潔癖さはあまりに異様な光景だった。
一方、ロストロポーヴィチ盤は、すごく濃い演奏。土俗的というかウォッカの香りというかシベリアの極寒地帯というかコサック踊りというか、まあ私がイメージする「ロシア」という国をぎゅっと凝縮させたような濃ーくて激しい演奏なのである。それを、アメリカとかイギリスの、いわばインターナショナルなオケから引き出すならまだしも、気分屋の集団でありどちらかといえば洗練された音楽を聴かせてくれるパリ管弦楽団からこんな土くさい表情を出すなんて、ロストロポーヴィチの手腕は尋常ではないと思った。


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Comment

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、こんばんは! この録音は長らく私の同曲最高のお気に入りとなっていました。最終楽章、船が難破する場面、ロストロポーヴィチは2倍遅いテンポにシフトしていますが、このドラマにはパリ管の色彩感も相まって非常に魅力的でした。
ただここ数年、あまりに豪華絢爛すぎてクリヴィヌ盤を取り出しています。年かもしれません(笑)。
2007.05.01 Tue 22:40 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

そうですね、ロストロポーヴィチ盤はテンポの変化が大きいです。それが独特の味わいを生んでいるのでしょう。パリ管はいい音を出しています。70年代まではとてもいいオケです。最近は聴いていないのでよくわかりませんが。
しかしまあ、この演奏はカロリー多そうです。ちょっと胃にもたれるようなボリュームがありますね。
2007.05.01 22:48

無題 - しじみ

こんばんは。ロストロさんはとうとう1回もコンサートで聴くことなく逝ってしまわれたので、本当に惜しいことをしたと思っていました。
でも、それはもっぱらチェロのほうだったのですが、吉田さんの記事を読んで、指揮も聴いておくべきだったと、改めてしまった!と思いました。ロストロさんのシェエラザード、ウォッカならぬロシアン・ティーでも飲みながら聴いてみたくなりました。
2007.05.01 Tue 22:50 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

ロストロさん、私も実演は聴けなかったです。20世紀でも屈指のチェリストでありましたから、残念であります。
チェロの凄さはもちろんですが、指揮者としても独自の色を発揮していました。圧倒的にロシア物が多かったですが、焼酎でいえば芋焼酎のようにクセが強いものでした。どんなオケを振っても、彼の色に染めていました。

やはり、ウォッカでしょ(笑)。
2007.05.01 22:59

無題 - ピースうさぎ

こんばんは。
ロストロさんのシェエラザードは私がこの曲をはじめて聴いたレコードでした。
第1楽章の冒頭から激しい音楽にすっかり魅了されてしまいました。
CDはやはり出ているんですね。買いなおそうかな。
2007.05.01 Tue 23:15 URL [ Edit ]

Re:ピースうさぎさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

私も「シェエラザード」の演奏の中では、わりに初期の頃にロストロポーヴィチを聴いた記憶があります。
演奏は激しいですね。ロシアの酔っ払いのような迫力があって、気を抜いていると張り倒されそうな勢いを感じます。
ここではパリ管もいい味を出しています。
2007.05.01 23:35

無題 - garjyu

『勝手にロシア五人組の日』ご参加ありがとうございます。
この頃、パリ管は色々積極的にレコーディングしていたのですね。ロストロのこのLPも垂涎の的でしたが、結局手に入れずじまいでした。ロスと炉追悼にちょっと探しに出てみようかな。
2007.05.02 Wed 04:54 URL [ Edit ]

Re:garjyuさん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

『勝手にロシア五人組の日』には、なにか凝った曲をやろうかなと思いましたが、これといったものを見出せず、定番曲になりました。
パリ管の録音は、EMIがちからを入れていたのですかね。このころは魅力的な録音が多いです。
ロストロの「シェエラザード」は、カロリー高めの演奏で、聴いた後は非常に満腹感があります。
2007.05.02 07:34

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます。
「シェエラザード」通俗曲かもしれませんが(?)、良い曲ですよね、熱くなる曲ですよね、オケストラの性能が、はっきりと分かってしまう曲で、怖い曲でもありますね~。
こういう曲には、フランスのオケストラがピッタリかもしれませんね。管楽器はソロ以外は意外に面白くない曲でもあるんですが~。
私は、フィラデルフィア盤が好きです、オーマンディ、ムーティ盤がお気に入りです。

ミ(`w´彡)
2007.05.02 Wed 06:25 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、おはようございます。 - 管理人:芳野達司

「シェエラザード」、良い曲ですね。フランスのオケは管楽器が聴かせるので、この曲のソロには華があるようです。
世界でも有数のオーケストラが多数録音していますが、やはりしかるべきところがやると映えますね。そうそう、フィラデルフィアを忘れてはいけなかった! どちらもLPで聴いたのですが、オーマンディは実に豪華は響きをだしているし、ムーティもなかなかでありました。
2007.05.02 07:40
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