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若林暢とヱイランド・アンサンブル演奏会

2007.12.05 - 演奏会


odoriko

昨日から2日間、伊豆の天城で研修。時間がなかったので観光はできなかったが、施設の温泉にひたってつかの間の癒しをえられた。
なんて。
いつもわりにヒマであるのでつかの間ではないし、温泉と普通の風呂の違いもわからないから大浴場であればどこでもいいとも言える。こういうセリフを言ってみたいものである。
出張のよいところのひとつは、社費で遠距離電車に乗られることだ。行きは東京から「踊り子号」。気取らないデザインに味がある。
帰りは伊東から伊東線で熱海へ、熱海から「こだま」で東京まで。新幹線は出張族のおとっつぁんばかりで味もそっけもないものだが、300系のスタイルは未だ古びていない。「ひかり」や「のぞみ」は10分に1本くらいでバンバン走っているのに、日中の「こだま」は、1時間に2本しか出ていないのは意外。


wakabayashi


東京文化会館の小ホールに来るのは実に久しぶりで、たぶん20年以上のごぶさただ。
横幅が狭い割には天井が高いので、小さい舞台に20人のプレイヤーがいてもうるさく感じない懐の深さがある。残響は短い。
1曲目はヴィヴァルディの「四季」。冒頭からまろやかな音がホール一杯に響き渡る。この曲は最近聴いていない有名曲のひとつだが、こうして通して聴くと、1曲1曲がそれぞれ持ち味の異なるものであることにはっきり気付く。ことに「夏」の荒々しさに、遠いバロック時代に思いを馳せずにいられない。
若林のヴァイオリンは指揮を兼ねる。彼女はとても多彩な音色を駆使する演奏家であるけど、それはこの「四季」でも明確になっていた。静かで遅い部分では、ピーンと張り詰めたまっすぐな音が清冽であるし、激しい部分は容赦なく弓を叩きつけるように楽器に鞭を打つ。高音は伸びがあり、
低音は重量感があって深い。ときおり音程がずれるのが惜しかったけど、これほどヴァイオリンの音の広がりと鮮やかさを追求してうまく引き出した演奏はなかなかないのじゃないかと思う。
宮澤健一は、今年8月に78歳で逝去した作曲家でヴァイオリニスト。「舞曲」と「回想」は弦楽合奏の音楽で、聴く前は前衛的なものかと思っていたが、ロマン派風の作品である。北欧の作曲家が書くような小品であり、聴きやすかった。
若林は、この曲から最後までをコンマスとして参加。指揮者はいないので実質的に彼女がオケをリードしていた。
ヱイランド・アンサンブルは、若林が主宰する20人くらいの団体で、主に弟子筋で固められているらしい。若い女性が9割を占め、目の保養になることも特筆したい。
プログラムの最後はメンデルスゾーンの「八重奏曲」。この曲を最近大変気に入っていて、ipodに入れて毎日聴いている。今好きな曲のベスト3に入れたいぐらいである。不思議に何度聴いても飽きないのだ。ことに3、4楽章はいい。圧倒的な快速感とみずみずしさ、そしてアンサンブルの華やかさ。いつもはオリジナル版で聴いていて、弦楽合奏版では合奏の精緻さが失われるのではないかと懸念したが、それを補って余りある推進力があった。
3、4楽章は、きちんと速いテンポが設定されていて、それが予想以上に合っており、それに加え大人数での気迫のようなものが舞台から発射されていた。曲そのものの軽やかさにいくぶんかの重量が加わった壮麗な演奏で、聴きごたえがあった。
アンコールはヴィヴァルディの「調和の幻想」から。
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Comment

無題 - ピースうさぎ

こんばんは。
ご無沙汰しております。

若林さんの名前はどこかで見た覚えが、、、と思ったら、CD棚にアイヴズのソナタ全集がありました。アルテ・ノヴァで録音しているのですね。
吉田さんの記事を読んで、生の若林さんの演奏を聴いてみたく思いました。

あ、それにメンデルスゾーンの八重奏曲、私も好きです。
2007.12.05 Wed 21:32 URL [ Edit ]

Re:ピースうさぎさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

CDもお持ちとは、サスガです。彼女は90年代まで米国を中心に活躍していましたがCDが非常に少ないのです。
デビュー盤のブラームスを先日入手しましたが、アイヴズはまだです。
今狙っています。アイヴズのソナタは聴いたことがないので楽しみです。
若林さんの音色はとても多彩で、ヴァイオリンはこんなに鮮やかな音がするものなのかと目から鱗でした。
メンデルスゾーンの八重奏曲、よかったです。
2007.12.06 17:58

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

踊り子号、いかがでしたか?
研修ですか、伊豆の天城、良かったですか?

ヴィヴァルディの『四季』、生で聴いたのは、もう30年以上も前かもしれません。ミュンヒンガーの指揮する団体でした。

メンデルスゾーンのオクテット、本当に良いですね、トスカニーニの弦楽合奏版もありますよ。
是非、聴いてみてください。

ミ(`w´)彡 
2007.12.05 Wed 22:39 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

踊り子号、初めて乗りましたが、車両がわりと古かったですね。平日の昼間とあって、空いているのは快適でした。
雲が多かったですが、ときどき富士山も見られてなかなかでした。二日酔いがなければもっとよかったでしょう…。
ヴィヴァルディの『四季』も、生だと迫力があります。
メンデルスゾーンはいいですよねえ。演奏会ではあまり多くはやらないような気がします。最後の2つの楽章は素人目に難しそうですが、うまく弾いていました。
2007.12.06 18:05
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