新国立劇場のヴェルディ「ドン・カルロ」公演に足を運びました(2021年5月23日、新国立劇場にて)。
このオペラの実演は2度目。何年か前に江東区民オペラを観劇して以来で、あのときは歌手陣が充実していて、とても面白かった記憶があります。
今回はコロナ禍の影響で何人かの歌手が交替しているけれど、どうだったか。
これは、音楽と舞台が高次に融合した見ごたえのある公演だったと思います。
歌手陣。
カルロの歌は輝かしく柔らかく、そして適度な抑揚が心地よい出来栄え。この日最上の歌いぶりでした。
エリザベッタは、最初はやや硬い印象を受けましたが、3幕以降は鉄板。情感たっぷりな歌唱に酔いしれないではいられなかった。
エボリはとても広がりがあったし、フィリッポは厚みがたっぷり。宗教裁判長は老獪な雰囲気を色濃く纏わせており、風貌も妖怪っぽい。音楽と見た目が見事に合致していて愉快でした。
ロドリーゴ。音程は安定していたけれど、いささか生硬な感じを受けました。でも、オペラ史上における「いい奴」ランキングの上位であろう役柄をまっすぐに演じ切っていて、ときおり落涙を禁じえませんでいた。
合唱はいつも通りにいい響き。
オケは技術的にほぼノーミス。たとえばフィリッポと宗教裁判長とのくだりは、緊張感たっぷり、細やかな情緒にも不足することがなく立派。指揮者はオペラの手練れ、このオペラを何度も指揮しているからこその成果でしょう。
演出は、奥行きのあるスペースをじゅうぶんに生かしたもの。機動的であり、ときには壁を移動させて密室的な空間をあらわし、シンプルながらも合理的かつ雰囲気のある舞台だったと思います。
【フィリッポ二世】妻屋秀和
【ドン・カルロ】ジュゼッペ・ジパリ
【ロドリーゴ】髙田智宏
【エリザベッタ】小林厚子
【エボリ公女】アンナ・マリア・キウリ
【宗教裁判長】マルコ・スポッティ
【修道士】大塚博章
【テバルド】松浦 麗
【レルマ伯爵/王室の布告者】城 宏憲
【天よりの声】光岡暁恵
パオロ・カリニャーニ指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
新国立劇場合唱団
【演出・美術】マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
【衣 裳】ダグマー・ニーファイント=マレッリ
【照 明】八木麻紀
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