苫米地英人の「あなたは常識に洗脳されている」を読む。
「人口は少ないほうがいいに決まっています。地球上には、現在約68億人が住んでいます。そのため、自然が破壊されるような環境問題、食料が足りないという問題、石油が足りないというエネルギー問題など、大きな問題が起こっているのです」
苫米地は、軽く1時間で読めるような自己啓発書を多く出しているので怪しい学者かと思っていた。本書においても極端な意見があって「?」と感じるところはあるものの、納得のいく考えも少なくない。切り口の鮮やかさは、大前研一や池田清彦に通じるものがある。
彼は、日本の食糧自給率が約41%であるという問題を解消し、さらにアフリカなど世界の飢饉を解消するべく提案を行っている。名付けて「フード・ディール・プロジェクト」。具体的には「中南米の国から大量の土地を借り、そこで農作物を作る」というもの。
そこでは現地の国の人を雇用し、費用、開発ノウハウは日本が供給する。そこで採れた農作物は、アフリカの飢餓地域に配ったり、日本に輸出する。世界の評価は高まるし、日本の資本で行っているのだから41%の数字はもっとあがる。さらには、地球の酸素が増える。
いいアイディアだと思う。
他にも「日本は独立国ではない」などという説が開陳されていて、面白い本である。
ショルティ指揮ミラノ・スカラ座の演奏で、ヴェルディの「シモン・ボッカネグラ」を聴く
(1988年12月、ミラノ、サラ・アバネッラでの録音)。
C・クライバーとアバドが1981年のスカラ座引っ越し公演に来た時、高校生のくせに全演目を観に行ったバチあたりものが友人にいる。仮にKとしよう。
この公演は、とりわけクライバーが大きな話題になったし、彼の「オテロ」と「ボエーム」は前評判通り。もう、ほとんど聴かないが、前者はまだエアチェックテープを保存している。
だがKは、この引っ越し公演で最高だったのは、アバドの「シモン・ボッカネグラ」だと言っていた(今もしつこく言っている)。とても、意外だった。
この演奏、たしかFMでは放送されなかったのではないかと記憶する。あれば、録音したはずなので。仕方がないから、アバドのLPを図書館で借りて聴いた。確かにいいような気はしたが、実際のステージとは感興が全然異なるだろうから、どうだかわからない。
「シモン・ボッカネグラ」と聞くと、このことをいつも思い出す。
なんだか、やな感じなのである。
さて、ショルティ。録音年代から予想できたことだが、音楽が丸い。1960年代にローマやロンドンのオーケストラとやったヴェルディみたいな、切っ先の鋭さやパンチ力が薄くなっている。そのかわり、まろやかな味わいは増している。
ただ、歌手にぴったりと寄り添うところは、昔と変わらない。
歌手はみんないいけれど、とりわけヌッチとブルチュラーゼを気に入った。存在感抜群。ヴェルディ・バリトンの面目躍如。
スカラ座のオーケストラ・合唱はみずみずしくていい。
レオ・ヌッチ(Br)
パータ・ブルチュラーゼ(Bs)
キリ・テ・カナワ(S)
ジャコモ・アラガル(T)
パオロ・コーニ(Br)、他
春。
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