ボロディン弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏13番を聴く。
問題作である。
ベートーヴェンが作曲をした当初は、最終楽章に長大なフーガを配置していた。その規模は非常に大きいため、これでは楽譜は売れないだろうという進言を受け、このフーガは別作品として出版された。それに変わるものとして、もっと明るくて短く、親しみやすいアレグロ楽章に差し替えられた。
ただ今は、この曲を演奏する際にはほとんどが、当初の最終楽章である「大フーガ」は同じ曲のひとつとして演奏される。
さて、これをどこに配置するか。知る限りのディスクでは、短いフィナーレの前に大フーガをもってくる演奏がやや多いように思うが、大フーガを最後にもってくる演奏もある。どちらにせよ、フィナーレがふたつ連続する感じがあり、いささか坐りが悪いのだ。
同じ演奏会でやるとしたら、短いフィナーレで完結してカーテン・コール、改めて大フーガを演奏する、というスタイルがいいように思うのだが、どうだろうか?
ボロディン四重奏団は、ここでも好調。柔らかくまろやかで肌理の細かな音でもって、覇気のある演奏を繰り広げる。音のバランス、分離も申し分ない。
ちなみにこのディスクでは、大フーガは6曲目(短いフィナーレの前)に置かれている。CDで聴く分には、自分で好きなように頭出しをする手もあるが、面倒だからしない。
これで、このボックスは全部聴き終わった。4,5,7,9,11,13,15という、なんとも言えない選曲であるが、演奏は満遍なくいい。他の曲をやっても、きっとレベル高いだろう。
バリリや東京、ブダペスト、ズスケなどと共に大事にしたいディスクである。
ミハイル・コペルマン(vn1)
アンドレイ・アブラメンコフ(vn2)
ドミトリ・シェバリン(va)
ヴァレンティン・ベルリンスキー(vc)
1989年2月、イースト・ウッドヘイ、聖マーチンズ教会での録音。
春。
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