ショルティ指揮ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団・合唱団の演奏で、ヴェルディの「仮面舞踏会」を聴く。
ボストン総督のリッカルドは部下であるレナートの奥さんと不倫をしている。それを知ったレナートは総督の反逆メンバーと手を組み、仮面舞踏会の場でリッカルドを殺害する、という話。
エドガー・アラン・ポーの「赤き死の仮面」のイメージもあり、仮面舞踏会とは喜びの席というよりは、悲劇の舞台にふさわしいように感じる。
それにしてもこのオペラは管弦楽が雄弁だ。なにしろ響きがぶ厚い。歌の伴奏という枠を超えて、あたかも歌唱つきの交響曲の様相。色彩感もたっぷりで、後の「トラヴィアータ」や「ファルスタッフ」の足音が聴こえる箇所もある。だからこそ、ショルティの手腕はより光る。落ち着いた場面ではぴったりと歌い手に寄り添う。ディテイルも非常にしっかりとしている。激しい場面ではこれでもかというほどの咆哮をみせる。抜群の切れ味のよさが悲劇を引き立てる。
聖チェチリア管はしっとりと潤いのある響きを聴かせる。金管楽器はしっとりとしたいぶし銀の輝きを放つ。ソロも闊達。イタリアではミラノのスカラ座がうまいが、このオケはひけをとらない。
歌手ではニルソンがやはり圧巻。このうえなく力強くドラマティック。泣く子も黙るしかない、か。ベルゴンティの繊細な歌唱、シミオナートの深い色香ある佇まいも素晴らしい。
録音は鮮明、この年代にしては最上級ではなかろうか。
ビルギット・ニルソン(アメリア)
カルロ・ベルゴンツィ(リッカルド)
コーネル・マックニール(レナート)
ジュリエッタ・シミオナート(ウルリカ)
シルヴィア・スタールマン(オスカル)、他
1961年7月、ローマ、サンタ・チェチリア音楽院での録音
コテージにて。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR