ベートーヴェン ピアノ協奏曲ニ長調 杉谷昭子(Pf) オスカンプ指揮ベルリン饗野茂引退。
とうとうこの日がきた。
悔いが残ると言っているが、体裁を気にしない彼らしい。あと1度はノーヒット・ノーランをみせてくれると期待していた。野茂が衰えたというよりも、メジャーの野球が世知辛くなったからに違いない。
野茂は、日本人メジャーリーガーのパイオニアとしての功績が大きいといわれるが、それ以上に、われわれを熱狂させるなにかをもっていたような気がする。
オールスターで先発したときや、二度のノーヒットノーランを達成したときの興奮。
ニュース番組を可能なかぎりハシゴして堪能し、さらに翌日の朝刊で感動をかみしめたものだ。
そのネタで、一週間は楽しく酒を飲むことができた。
今後、野茂のプレイを見ることができないのは痛恨の極みといっていい。
近いうちに放送されるであろう「野茂特集」をしつこく繰り返し観て、しばらくは過去にひたることになるのだろうな。
ピアノ協奏曲ニ長調は、ヴァイオリン協奏曲を編曲したもの。
この曲を聴くのは、バレンボイムの弾き振りのLP以来である。
そもそも、原曲のヴァイオリン協奏曲がなかなか難物である。キチッとしたソナタ形式にのっとっていて聴きやすい反面、メロディーがかたいというか色気に乏しいし、なにしろ長いから集中力を持続して聴くことがわりと大変な作品であるように思う。
聴いていてそう思うのだから、弾くほうはことさら気を使うだろうと推測する。
それは、ピアノに編曲したからといって解消される類のものではないらしい、というかむしろピアノ版のほうが聴くのは楽ではない。
ポツポツとした鍵盤の音は当然ながらヴァイオリンよりも均等に鳴っている時間が短いため、音と音との間が広くなるわけで、それがなんともいえない間になっており、曲そのものの長大さをさらに冗長しているようだ。
それは、悪く言えば退屈なひとときなのだけれど、ある意味でシュールな味わいを出しているとも言える。
不思議な音楽である。
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