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バルビローリのブラームス「交響曲第4番」

2008.07.13 - ブラームス

brahms

ブラームス交響曲第4番 バルビローリ指揮ウイーン・フィル


北尾トロの「男の隠れ家を持ってみた」を読む。
フリーライターの著者が、風呂なしのアパートを借りて本家との二重生活をするというもの。
知らない街に溶け込むために、隣人におせっかいを焼いたり、飲めないのにスナックに通ったりと悪戦苦闘。
私などは、男が隠れ家をもつ理由は、愛人を囲うとか、およそイケナイことを思いつくわけだが、この著者はそういう後ろめたいことではなく、ただ隠れ家をもつために隠れ家をもったわけだ。
取材のためといったらそれまでだけど、この隠れ家生活、あまりこれといった事件もなく淡々と過ぎてゆく。
住む場所が変わっても、自分が自分であるかぎり、実生活には大きな変化はないということだろう。


蒸し暑い季節ではあるけれど、たまにはコッテリとしたものを食べたくなるのは音楽も同じ。
暑苦しいブラームスのシンフォニーを、たっぷりと脂の乗ったバルビローリの指揮で。
これは中学時代に図書館で借りたLPを聴いて感涙した1枚である。
大人になってから聴き返してみると、当時ほどには感激しないものの、実にユニークな演奏であることを思い知らされる。
冒頭からバルビ節が炸裂しており、とまどいながらも引き込まれてゆく。こういう音楽には、身も心もまかせてしまったほうが面白く聴くことができる。
テンポは極遅、思い入れたっぷりの鳴らしっぷりはバルビローリの独壇場である。チェリビダッケも遅いテンポによる名演奏だけれど、温度差があって、バルビローリのはひたすらに暑い、いや熱い。
それぞれの楽器がとても雄弁に鳴っていて、3楽章なんかは意外にリズミカル。内声部も自然に聴こえてくるので、テンポの遅さ以上に広がりを感じる。
ウイーン・フィルの響きは、このオケにしては濃厚ではなくサッパリしている。
こんな面白い演奏が、今は廃盤とは残念。

1967年12月、ウイーンでの録音。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

読書も進んでおられますね〜
暑い中の読書も乙なものかもしれませんね

バルビローリのブラ4ですね
私は一度も聴いたことがありません。
バルビローリだと、マーラーの9番、ディーリアスの曲集などしか持っていないように思います。
熱いブラームスなんですね
暑くないですか?? 夏場はブラームスはまったく聴かないですね(というか、ブラームスのシンフォニーをあまり聴かないのですが)。

良い演奏が廃盤になっていくのは、寂しいものですよね〜。テスタメント盤だとあまり廃盤にはならないように思うんですが〜。

私の方は、アンセルメの復刻盤が届いたので。バレエ曲集を聴いています。気楽で良いですよ~。

ミ(`w´彡)

2008.07.13 Sun 17:55 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

読書ですが、通勤電車時間が長いので、読む気になればかなり読めます。休みの日もわりとヒマなので、否応なく進んでゆきます…。

バルビローリはウイーンフィルとブラームス全集を完成していますが、ことにこの4番がいいように思います。
熱いブラームスですし、実際暑いですね。
この時期のブラームス、ことにシンフォニーは大変ですが、ときどき無性に聴きたくなるのです。真夏にあんこう鍋を食べるような感じかもしれません。体感的にはむしろマーラーのほうが涼しいかも知れません。

アンセルメのバレエは良さそうですね。
2008.07.13 22:01

無題 - mozart1889

バルビローリのブラームス全集、懐かしいです。EMIのセラフィム盤・緑の1,300円盤LPで揃えていましたが、CDが非常に安く出たので買い直しました。1番と3番はバルビローリ向きではなかったのかなぁと思うんですが、この4番と2番は素晴らしい演奏でした。
おそらく、「すすり泣く」演奏としては、このバルビローリ盤が最高でしょう。遅いテンポがエエんでしょうね・・・・・。
古い記事ですが2番でTBしてみます。
2008.07.14 Mon 07:08 URL [ Edit ]

Re:mozart1889さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントとTBをありがとうございます。

LPはEMIのセラフィム盤でしたね。懐かしいです。
あれも廉価でしたが、CDの全集は安すぎですね!
バルビローリの演奏は、曲によってムラがありますね。相性のよしあしがあるというか。この4番は好きな演奏です。
いわゆるバルビ節が全編にわたって聴くことができて、またこれがこの曲と合っているように思います。
ウイーンフィルもいいですね。録音のせいか、ベタベタではなく、わりとスッキリしているように聴こえました。
いまもって、この曲のはずせない演奏だと改めて思いました。
2008.07.14 12:44

無題 - yokochan

吉田さん、こんにちは。暑いですねぇ~
まさにこうした中で聴くバルビローリのブラームスもいいかもしれません!
私もセラフィムの1300円盤のレコードを楽しみ、簾価CDで買い直してます。
ブラームス全集はいくつもありましが、このコンビのものは絶対にわすれちゃいけませんね。
私のほうは、真冬に聴いたものをTBさせていただきました。
2008.07.15 Tue 12:52 URL [ Edit ]

Re:yokochanさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントとTBをありがとうございます。

暑くて参ります。クーラーが壊れて、修理を頼んでいます。暑くて眠れず難儀しています。子供のころはクーラーなしでも眠れたのですが…。

暑苦しいとはいえ、むしょうにブラームスを聴きたくなることがあります。このバルビローリ盤、忘れられません。
たっぷりしっとりとした響きは、このコンビならではかもしれません。
貴ブログ拝見しました。そうそう、忘れられないのが「ハイドン変奏曲」。このたび、この演奏も聴き返しましたが、冒頭から引き込まれました。実にしみじみといい演奏でありました。
2008.07.16 22:17

無題 - neoros2019

最近ブラームスは聴いていませんのでそちらには触れませんが、男の隠れ家というところでつげ義春の漫画で1975年≪退屈な部屋≫というのが、まさにその話にダブってきます
なにもない部屋にポツンと何もしないで退屈をむさぼるというのにもちょっと、憬れますね
2008.07.16 Wed 12:00 URL [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

この季節のブラームスもいいものです。別に夏だから悪いというものではなく気分なのでしょうが、たまたま聴きたくなって取り出したのが、このバルビローリでした。
ふくよかないい演奏です。4番では、マゼール/クリーヴランドと並んで好きな演奏なのです。
それぞれ、スタイルは遠く離れていますが…。
つげ義春、新潮文庫の、題名は忘れましたが、なんとかの旅の漫画を少し読みました。寂しい絵がいいです。郷愁と昭和を感じます。
2008.07.16 22:22
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