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ミンツとシノーポリのベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」

2008.09.23 - ベートーヴェン

beethoven

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 ミンツ(Vn)シノーポリ指揮フィルハーモニア管



池谷裕二と糸井重里の「海馬」を読む。
一時期、脳関係の本が流行っていたようだ。脳死は死か、という議論が盛んだったこととか、養老孟司の本がたくさん出始めたのがきっかけだったのかも知れない。
海馬は、脳の中心部にある小指ほどの大きさの部位で、記憶をつかさどる機能を持つとのこと。
この本を読んで初めて知ったことがいくつかある。
それは、脳は疲れないということだ。死ぬまで元気に働き続ける。脳が疲れたという感覚は実は目の疲れであり、目を休めればまた元気になる。
それから、睡眠は1日に最低6時間はとったほうがいいという説。
最近、短時間睡眠関連の本が多く出されているので、ちょっと気にかけていた。3時間の睡眠でこと足りるのであれば、有意義な時間が増えるわけで、これはなかなか魅力的な冒険だ。
でも、それは間違いだという。
脳は死ぬまで休まないけれど、睡眠中には、起きていたときの出来事を編集する作業にいそしんでいるのだ。夜にやった仕事を翌朝に確認するといろいろ修正点を発見するのは、この編集処理によるものらしい。
徹夜を何日か続けると幻覚がみえてくるのは、本来睡眠中に実施されるはずの編集作業が起きているころに処理されてしまうから、ということだ。
というようなウンチクがいろいろ飛び出して、面白い本なのだ。
脳の機能の全貌はいまだに明らかにされていないらしいが、よくわからないところがまたいいのだと思う。


ミンツとシノーポリのベートーヴェンをひさしぶりに聴く。
私の海馬によれば、綺麗だけどオケが気取っている、という記憶がある。
今回改めて聴いてみると、その印象はおおむね違っていないけど、気取っているように聴こえるのは丁寧さからきているのではないかと思った。
弦も、木管も、ティンパニも、微にいり細にいり、計算しつくしたようなテンポと強さを保っている。
不安定な平均台の上で歩くような慎重さ。
そういったところ、とても神経質な感じを受けるが、現代的といわれればそうかもしれない。
シノーポリの残したベートーヴェンの録音は、他にアルゲリッチとのピアノ協奏曲もあるが、かなり似通っている。オケをスリムに整えて、とてもスマートだ。泥臭さとは無縁のこのスマートさが、当時は鼻についたのだろう。
スケールの大きさはさほど感じないが、これほどデリケートな演奏も珍しい。
ミンツのヴァイオリンの、やや線の細いところがオケによく合っている。テンポをたっぷりとって存分に鳴らしている。透明感が快感だ。
クライスラーのカデンツァも、落ち着いた佇まいを感じるいい演奏である。

1986年9月、ロンドンでの録音。

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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんにちは

いつものように、今回も未聴のままのコメントです、爆〜
「記憶」のメカニズム 分かっているようで分からないことが多いようですね。養老氏の著作はほとんど読んでいるんですが(マニアです、爆〜)、「人間の脳」には「人間の脳」のことが分かることはない、と養老氏が書かれていたように思います。「超人」に人間が進化(?)したとしたら、分かる日も来るかもしれませんね〜。

シノポリは、「アイーダ」を振っている最中に亡くなったそうですが、私の大好きなR・シュトラウスのオペラの録音を多数残してくれています。マーラーも全集があるそうですが、5番しか聴いたことがありません。

ミンツは、イスラエルでの演奏会で、ユダヤ系のヴァイオリニストたちと、確かバッハのコンチェルトを弾いていたのを覚えているくらいです。
どうも、古い時代のヴァイオリニストばかり、最近聴いています〜。

ミ(`w´彡)
2008.09.23 Tue 12:10 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

養老氏の著作をお読みになっているのですね。私も何冊か読みました。
「人間の脳」には「人間の脳」のことが分かることはない、なるほどですね。わからないことがあるほうがジンセイ面白いような気がしますね。

シノポリは、レコード録音が多く、全部いいとは限りませんが楽しませてくれます。
「アイーダ」を振っている最中に亡くなったのでした。カッコイイ逝き方ですよね。
ミンツは、久しぶりにじっくり聴いたのですが、いいヴァイオリニストだと思います。音はきれいで技巧もしっかりしています。
2008.09.26 12:36

無題 - 木曽のあばら屋

こんにちは。
「海馬」は面白い本でした。
「30歳をすぎてから頭は良くなる」には元気付けられました。
実際によくなったかはちょっと・・・(?)。
池谷さんの「進化しすぎた脳」も、ちょっと難しいけど興味深く面白かったです。
実は今、池谷さんの最新本「ゆらぐ脳」を読んでます。
2008.09.23 Tue 19:13 URL [ Edit ]

Re:木曽のあばら屋さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

「30歳をすぎてから頭は良くなる」、書いてありましたね。
書きながら覚えると子供より成績がよい、てなことも。
元気づけられます。
とはいえ、普段はあまり自分のオツムを活用できていないのですが…。
池谷さん、ほかにも本を出しているのですね。「海馬」は、脳関係の本ではもっとも面白いもののひとつでしたので、対談以外の著作も面白そうですね。
2008.09.26 12:41
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