アルトゥール・ベネデッティ・ミケランジェリ/ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第12番『葬送』」この変イ長調作品26の作曲は1800年から1801年頃。ベートーヴェンの初期から中期への転換期にあたっているが、ソナタ形式を用いないで、かつ第3楽章に葬送行進曲風の題材を使っていることを鑑みると、完全に独自性を発揮した作風になっていると言える。
しかしこの曲、ショパンの第2ソナタに酷似している。順序からいえば、もちろんショパンがベートーヴェンを真似たわけだが、多くのヒトはショパンの曲を先に聴くだろうから、ベートーヴェンのほうが真似たように感じてしまうのではないだろうか。私はそうであった。
全体の構成といい、長さといい、葬送行進曲の雰囲気といい、そっくりな双子の兄弟のようである。
もともと録音の少ないミケランジェリであるが、幸いというか偶然というべきか、このふたつを(正規ではないにしろ)録音に残している。
ミケランジェリの最後の日本公演時には、ショパンの第2ソナタがやられて、この演奏は全盛期の彼のピアノを思わすような透徹した音を聴かせてくれたが、ここでのベートーヴェンも彼ならではという他ない音色である。音色を生かすためのテンポであり、曲の選択なのかも知れない。彼にとって音色そのものは大変大事であったろうし、実際に重要であるが、彼ほど神経質に音を追及した人は少ない。
それだけに彼のピアノを聴いて、この音色に酔うことは、音楽を聴く大きな楽しみのひとつなのである。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
メールアドレスを入力してボタンを押すと登録できます。
PR