忍者ブログ

グリュミオーとベイヌムのベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」

2009.10.17 - ベートーヴェン

be

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 グリュミオー(Vn) ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団


ひろさちやの「奴隷の時間自由な時間」を読む。
著者は中学のときに英語の授業で「今日できることは明日に延ばすな」という格言を教わったとき、それに反発して「明日にできることを今日するな」という反対の格言を作ったのだが、実はトルコにもっとすごい格言があって参ったという話が紹介されている。そのトルコの格言とは「明日できることは今日やるな!他人ができる仕事を自分がやるな」というもの。
「他人ができる仕事」について、著者は最後の自分の後始末である葬儀のことであると解釈している。これは確かに遺族もしくは他人の仕事であって、けっして自分ではできないものだ。
でも、この解釈はまっとうすぎてちょっと面白くない。どうせならストレートに、他人ができる仕事ならば他人にやらせて自分はそのへんで寝転がっていよう、くらいに読み取りたい。
寝転ぶまで達観していないが、私はけっこうこれを実践している。人がやってくれるならてきとうにサボり、自分がやらなきゃいけないときだけはしぶしぶ立ち上がる、といった具合。
働きアリの残り8割を実践しているのだ。ときどき、周囲からの風当たりを感じることがなくもないが、それで経済はまわっちゃうのだから仕方がない。


グリュミオーとベイヌムのベートーヴェン、冒頭のティンパニが素晴らしい。重量感があり適度に張りがあってなにやら高貴な香りがほんのりと漂っている。いままで聴いたなかでもトップクラスの冒頭かも。
出だしのたった4発が以降の展開を決めるといっても過言ではない場面なので、ポイントは高い。
長いオーケストラの序奏は、中庸なテンポを基調にしており呼吸が深くメリハリをはっきりつけている。伸びやかな弦とともに要所でピリリと木管を利かせているあたり、小技が冴える。
グリュミオーのヴァイオリンは、きらびやかな高音の艶はいつも通り、それに加えて切り込みが鋭い。ときどき弦がきしむような音が聴こえてくる。余裕のある弾きぶりというよりは、激しく燃える感情をぐっと抑えているものの、抑えきれずに漏れてしまっているような昂ぶりがある。
1楽章のカデンツァはクライスラーのもので、冒頭と並んでこの演奏の白眉といえる。基本的には美音でありつつもそれに甘んじることなく激しく切り込んでいく。松脂が眼前に飛び散るのが見えるような弾きかたであり、正気を逸脱したものを感じる。
コンセルトヘボウの弦のピチカートが素敵な2楽章を経て、終楽章は一気呵成の勢いで聴かせる。オーケストラもヴァイオリンも、速めのテンポでぐいぐい押していく。弦と木管と金管と、各パートがはっきりとききわけられる指揮者の采配はさすが。カデンツァはクライスラーと思ったが、後半は聴きなれない音楽であった。グリュミオーが手を加えたものか?わからない。


1957年6月、アムステルダム・コンセルトヘボウ大ホールでの録音。


PR
   Comment(1)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP

Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます〜

「今日できることは明日まで延ばすな」という諺は良く聞くものですが、「今日できることは明日にしろ、他人に出来る仕事は自分でするな」後半は、そのままに受け取ってしまいました、爆〜。

内田樹氏の「下流志向」少しずつ読んでいます。子供が消費主体になっているというところ、私もいつも感じていることが論理的に書かれていて面白いです〜。

グリュミオーとベイヌムのベトベン
聴かれましたか〜。私も去年の3月頃にブログに書いています。冒頭のティンパニ、今朝聴いてみましたら、少し音が高いような気もしました。全体としてオケストラは同じような伴奏を繰り返し、ヴァイオリンのソロが変化を付けていくような曲ですが、飽きさせずに聴かせるところは素晴らしいように思いました。
3楽章のカデンツ、覚えておりません。もう一度聴いてみようかなと思っております。(このところ、コンポのCDでは困っていますが、このCDはコンポのCDでも認識してくれます、爆〜)。

ミ(`w´彡)
2009.10.18 Sun 08:14 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

このトルコの格言はなかなかですよね。しゃれています。日本には合わないかもしれませんが、このくらいテキトーなほうが精神衛生上いいのじゃないかと思います。

「下流志向」読まれていますか。若者が自分の仕事量と対価を比べつつ損得を計るというところ、理解できます。その反面、使うほうは難しいですね。

ベートーヴェンのコンチェルトは、凡庸な演奏だったら退屈するところですが、この二人であればそういった懸念はありません。ベイヌムのオケは雄弁で、グリュミオーは気合満点です。
単純なだけに演奏するのは難しい曲じゃないかと思います。
2009.10.18 21:52
コメントタイトル:
投稿者名:
Mail:
URL:
投稿内容:
Password: ※1
Secret: 管理者にだけ表示を許可する※2
※1 パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。
※2 チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

TrackBack

この記事へのトラックバック
TrackBackURL
  →
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
4 5 6 7 8 9
11 12 13 14 15 16
18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新TB
カテゴリー