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ギレリスのベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第26番"告別"」

2007.11.10 - ベートーヴェン

beethoven

ベートーヴェン 中期ピアノ・ソナタ集 ギレリス(Pf)



城山三郎「価格破壊」を読了。薬の小売を手始めに、どんな商品も安く提供するスーパーとして大手に成長するまでの経営の道のりを描いた小説。舞台は終戦後の高度経済復興期であり、モデルが実在するという。中内氏のことなのかと想像する。創業者である主人公のパワフルな働きぶりには圧倒されるばかり。家庭をかえりみぬ仕事人の典型である。この時代を背景とした経済ものは、こういう主人公が多いな。ともかく、電車で読んで元気が出る読み物のひとつだ。


ギレリスのベートーヴェンは昔によく聴いた。冴え渡る技巧とあざやかな音色は、わかりやすく迫力じゅうぶんだ。最近、あまり聴いていなかったのは、きつい打鍵と音色が耳に厳しく、これが最上のベートーヴェンとは思えなくなったからだ。
久しぶりに「告別」を聴いてみると、楽章ごとにムラがある。第1楽章は
からくり人形のように流れがぎこちない。ダイナミックは強く強調されている反面、力づくでねじ伏せようとする強引さがあり、やや1本調子に感じる。
続く第2楽章も傾向はあまり変わらず、響きも作りも硬質。ところが終楽章になると、突如柔らかみが出てきて、ひとつひとつの音が際立つようになった。それまでの流れからすると流麗といってもいいくらい。肩の力が抜けた、適度に緊張感のある音楽となっていて、この楽章に関しては第一級の演奏だと思う。
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Comment

無題 - rudolf2006

吉田さま こんばんは

拙ブログに、お見舞いのお言葉、ありがとうございます。
今日、届いた浅田次郎氏の『中原の虹』第4巻を読んでおりました。

ギレリスのベトベン、確かに打鍵の強さに驚きますよね。ブリリアント盤に『告別』が収録されていたので、先ほど聴いてみました。DG盤とは異なる演奏だと思うのですが、1楽章、2楽章の何とはなしの「ぎこちなさ」が、3楽章になると急に変わって、ソフトな感じになりますね。これは、きっとギレリスがそういう風に演奏したいと思っているのではないかなって思ってしまいました。違う録音でも同じように弾いているのではないかなって思いました。

ミ(`w´)彡 
2007.11.10 Sat 19:31 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

浅田次郎の「中原の虹」、出ていますね。浅田を好きなので読んでみたいですね。よく読んでいるつもりでも、彼はけっこう多作なのでまだ全部は読みきれていません。

ブリリアント盤もそうですか。あの1楽章には、ぎこちなさを感じました。確かに、ギレリスが意図的にそうしているのかもしれませんね。それに比べ、3楽章は見事な演奏だと思いました。
生を聴いたことがないのでなんとも言えませんが、DG録音は総じて硬いので、実演との乖離が大きいのではないかと感じます。
2007.11.10 21:44

無題 - bitoku

吉田さん、こんばんは。

ギレリスのベートーヴェンは昔聴いてあまり好みの演奏ではなかったです。
一般的にはベートーヴェン弾きと言われてますが、ベートーヴェン以外の演奏の方が面白かったりして一筋縄ではないです。(笑)
ライヴ盤で聴いたショパンとかスクリャービンとかが意外に良かったです。

>それまでの流れからすると流麗といってもいいくらい。肩の力が抜けた、適度に緊張感のある音楽となっていて、この楽章に関しては第一級の演奏だと思う

この盤は持っていないので確認できないのが残念です。
真面目そうな人なので”肩の力が抜けた”方が良い演奏になるのかも知れないですね。

しかしギレリスは高倉健さんみたいに不器用な男って感じですね。全然関係ないですけど。。。(笑)
2007.11.11 Sun 00:22 URL [ Edit ]

Re:bitokuさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

ギレリスのベートーヴェンは以前何枚か購入して聴いてきましたが、肩に力が入ったカチカチの演奏がつらくて、最近はとんとご無沙汰していました。DGの録音が、それに輪をかけたような硬質な録音なので、さらに疲れが増すようです。
おっしゃるとおり、ベートーヴェン以外のほうがいいかもしれませんね。ショパンやスクリャービンは聴いたことありませんが、ブラームスは良かったです。

>ギレリスは高倉健さんみたいに不器用な男。
(笑)! あの風貌は、寡黙な男のものですね。饒舌にギャグをとばしたりする姿は想像できませんねえ。
2007.11.11 11:27
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