忍者ブログ

選択したカテゴリの記事一覧

ピノックのヘンデル「メサイア」

2009.01.18 - ヘンデル
handel

ヘンデル「メサイア」 ピノック指揮イングリッシュ・コンサート、他


『ピノックに駄作なし』と言い放ったのは、かの三浦淳史である。80年代のこと。
その頃ピノックは好調で、ヴィヴァルディやバッハ、ヘンデルの管弦楽曲を次から次へと録音して世に送り出していた。
当時貧乏学生だった私は、近所の図書館へ毎日のように通ってはレコードを借りて聴いていたけれど、もちろん、ピノックにもお世話になっていた。バッハのチェンバロ協奏曲なぞ聴いては、わけもなくうなづいたりしていたものだ。
そもそも、古楽器が今ほどメジャーではなかったこともあって、ピノックの演奏する音楽は、いままで聴いたことのないような新鮮さに満ちていたものだった(もっとも、ホントに初めて聴く曲もすくなくなかったが)。
だから、三浦の絶賛にも納得したのだった。
古楽器がずいぶんと幅をきかせるようになった21世紀の今、ピノックの演奏が色褪せたかといえば、それは違う。彼の音楽は、今でもじわじわと光を放っている。

この「メサイア」は今から20年ほど前のものだけれども、彼の手による掛け値なく素晴らしい演奏のひとつ。
ピノックが念入りに、用意周到に紡ぎあげるオーケストラの淡白な響きもさることながら、ともかく合唱がいい。
音程はピシッと安定しており、透き通るハーモニーがこの上なくすがすがしい。「腰が抜ける」ほどではないにしても、この合唱の一節を聴いただけで、背筋が伸びて清らかな心地になる。
すみずみにまで気配りの行き届いた丁寧な演奏が、ずっしりとリアルに伝わってくる。
これはたぶん、いままで聴いた「メサイア」の中でも最高の部類に属するもので、合唱を聴くためだけでも、このCDを持つ価値はあるのじゃないかと思う。
歌手陣も、この合唱のレベルに劣らない歌いぶり。
オジェーのいぶし銀のようなじっくりとした味わい、オッターの繊細で豊かな表情、チャンスの凛々しさ、クルックのみずみずしさ。トムリンソンは、まるでドン・ジョヴァンニのような脂ぎった歌唱だけど、ピリリとしたスパイスとなっている。
全体的に、温度は低めで冷静であり、かつ眼差しが優しい演奏。
ピノックの名演のひとつである。


アーリーン・オジェー(S)
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(MS)
マイケル・チャンス(C-T)
ハワード・クルック(T)
ジョン・トムリンソン(B)
イングリッシュ・コンサート、合唱団
トレヴァー・ピノック(指揮,cemb)

1988年1月、ロンドンでの録音。
PR
   Comment(3)   TrackBack()    ▲ENTRY-TOP
カレンダー
06 2025/07 08
S M T W T F S
2 3 4 5
6 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
ポチっとお願いします(´_`\)  ↓ ↓ ↓
最新コメント
アリス=紗良・オットのピアノリサイタル from:Yoshimi
-06/29(Sun) -
河野真有美、Fantastico from:Yoshimi
-05/21(Wed) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/23(Sun) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/16(Sun) -
ポペルカ、バボラーク、NHK交響楽団 from:老究の散策クラシック限定篇
-02/16(Sun) -
最新TB
カテゴリー