ペライアのピアノでブラームスの4つの小品Op119を聴く。
この曲集はブラームスが60歳を迎えたときに出版された。これ以降、彼はピアノのソロ曲を書かなかった。
1曲目について、ブラームスはクララに宛てた手紙にこう書いている。
「不協和音の中から官能的な喜びと慰めを引き出すように弾かなくてはなりません」。
しかし、それを現代に生きる私が聴くと、やや不穏な気配を感じるものの違和感はない。不協和音を前面に押し出しているとは感じられない。マーラーやウェーベルン、あるいはストラヴィンスキーといったところを日常聴いているので、良くも悪くも鈍感になっているに違いない。「トリスタン」を当時聴くのと今聴くのでは感興が異なるのと同じようなことだろう。
ペライアはなかなか手厚い響きを聴かせる。そのなかに、淡い叙情も感じることができる。この4曲は最初の3つが「間奏曲」、最後が「ラプソディ」と副題がついている。それぞれの色合いはとても似ている。
このブラームスは、紅葉も終わりにさしかかる晩秋、というよりは深夜の都会みたい。ひんやりとして、香りがいい。
2010年6月、ベルリン、フンクハウスでの録音
コテージにて。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR