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ハッピー・リタイアメント、ブレンデル、ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」

2011.08.20 - ブラームス
  
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ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」 ブレンデル(Pf) ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管弦楽団


浅田次郎の「ハッピー・リタイアメント」は、天下り組織の金融保証機関を舞台にした小説。この組織、業務実態がないため、9時に来て5時までいれば何をしていてもよいという天国のような環境。
ワタシならば、昼寝三昧の生活に明け暮れて、そのまま朽ちてゆくだろう。
そんななか、元財務官僚と元自衛官が教育係と手を組んで、現状打開に奮闘する。
話の素材はいいものの、後半にいくにつれてだんだん焦点がボヤけてくるような気がした。ことにラストは冴えているとは言い難い。
浅田次郎にしては、いまひとつの出来。才人とはいえ10割バッターではない。


さて、ブレンデルのブラームスを聴く。
この曲の演奏の良し悪しは、冒頭で決まると思う。ホルンの響きがどのくらい素晴らしいかで、全容が見えてくる。
ホルンがいまひとつなんだけど、全体を通すといいねえ、というようなものもたまにはある。でも逆に、ホルンだけはいいんだけど、ほかはサッパリですなあ、なんていう演奏は今まで聴いたことがない。協奏曲にしてはオーケストラの比重が大きいからとか、最初がよければ勢いづきやすいといった要因が考えられる。
あるいは、デキるピアニストには優秀なオケをあてがうというような、身も蓋も無いビジネス上の都合も少しはあるのかもしれないが、それでいい演奏が保証されるほどブラームスは甘くはないだろう。

ともかく、このコンセルトヘボウのホルンは素晴らしい。おおらかで毅然としていて、たっぷりとした重量感がある。最初の2秒で勝負あった感じ。
同じようにコクのある厚い響きを聴かせるブレンデルもいい。ときに神経質なくらいに細部を克明に描いているけれど、意外にコセコセしていない。なめらかで広いスケールがあって、聴き応えじゅうぶん。


1973年12月、アムステルダム、コンセルトヘボウでの録音
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Comment

ブレンデルのブラームス - yoshimi

”ハッピー・リタイアメント”というタイトルを見て、一瞬ブレンデルのことかと思いました。
彼は「絶頂期で引退したい」という意向どおり、すっとステージから去って行ったので。
亡くなる直前までリサイタルで弾いていて、その途中や直後に倒れたピアニストのエピソードはよく聞きますが、こういう潔い引き際はブレンデルらしいですね。

ブラームスの2曲のピアノ協奏曲は結構CDを集めましたが、ブレンデル盤はなぜか持ってません。
最近になってブレンデルの録音をいろいろ聴くようになったので、ブラームスのCDもこれから買おうと思います。
この間ライブ録音もリリースされたので、どれを買おうか迷いますね。
探したところ、ブラームスの”Complete Concertos / Overtures”というPHILIPS盤が出ているので、これが良さそうでした。
このハイティングとの第2番と、ハンス・シュミット=イッセルシュテットとの第1番、さらにシェリング&シュタルケルのヴァイオリン協奏曲&二重協奏曲が入って、渋めですが充実したカップリングです。

浅田次郎というと、私が好きなのは『天国までの百マイル』です。ストーリーがとても面白いですし、登場人物のキャラクターが生き生きしてリアルです。
でも、サン・マルコ病院やドクター曽我の設定が現実ばなれしている気がするので、あまりリアル過ぎないところがファンタジーのように思えてきます。



2011.08.21 Sun 22:24 [ Edit ]

お茶の水博士 - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんばんは。
ブレンデルが引退したのは、去年か一昨年でしたか。歳相応とはいえ、ちょっとさびしい。生で聴いたことがなかったので、それはひとしおです。
ブラームスのピアノ協奏曲を集めているのですね。どちらがお好きですか?ワタシはどちらかというと2番です。随所にちりばめられた半音階が織りなす幻想感に抗しがたく。

シェリングたちとのカップリング、よさそうですね。
2番は引き続きイッセルシュテットが指揮する予定でしたが、彼が逝去したために指揮者が変わったという話を、昔ききました。
代役とはいえ、コンセルトヘボウなので素晴らしい演奏です。

浅田次郎で好きなのは「天切り松」シリーズです。「天国までの百マイル」、読んでみますね。
2011.08.22 22:49

ライブのブレンデル - yoshimi

こんにちは。
ブレンデルは引退してからも、続々とCDがリリースされていて、どれを買おうか悩ましいです。
最近買ったのは、リスト録音集ですが、《巡礼の年》は分売盤とダブりがありますが、リスト後期の作品が多くて選曲がブレンデルらしいですね。

ブラームスは、初めて聴いたのがツィメルマン/バースタインの第2番で、昔は第2番が好きでしたが、このごろは第1番の方を聴くことが多いです。
あの疾風怒涛的な曲想(特に第3楽章)を聴くと、高揚感のようなものを感じるのが気持ち良いせいでしょう。

第2番も好きな演奏がいろいろあるので(アラウ、カッチェン、アンダなど)、どれを聴こうかいつも迷ってしまいます。特に好きなのが第2楽章で、短調の悲愴感に魅かれてしまいます。
ハイティング&コンセルトヘボウというと、アラウも第1番&第2番を1960年代後半に録音していて、これも名盤と言われていたと思います。

ブレンデルの第1番のライブ録音はやっぱりオーダーしました。ブレンデル自身がアバド盤よりも良いと言っていたので。
ブレンデルに関するレビューを読んでいると、ライブになるとテンションがかなり高くなり、”激情家”的な面が現れるという人もいました。
そういえば、Youtubeのライブ映像で演奏する姿を見ると、かなり気合が入ってますね。
ライブで聴けば、CDとは違った印象になるピアニストなのかもしれません。(そういうところはアラウと似てます)
2011.08.23 Tue 22:49 [ Edit ]

アラウのブラームス - 管理人:芳野達司

yoshimiさん、こんにちは。

ブレンデルのリストはいいものですね。リストという作曲家をあまり聴いていなかったころ、ブレンデルの演奏を聴いて気に入りました。
それは70年代に入れたものと80年代のもので、どちらも「巡礼の年」からの選曲でした。
技巧的に派手な、世に広く知られている小品と比べたら渋いものですが、これはよいですねえ。

ツィメルマンとバースタインによるブラームスはLDで視聴していました。LDプレイヤーを廃棄したので今は観られないのですが。覇気があっていい演奏ですよね。
前に2番のほうを好むと話しましたが、1番ももちろん好きなのです。第3楽章は、ちょっとかけがえのない魅力があります。ベルマンとラインスドルフの演奏が印象に残ります。
また2番は、アラウとジュリーニのコンビによる名盤がありますね(ハイティンクとのものは、まだ聴いていないのです)。明るくて鮮烈なすばらしい演奏。何度聴いても飽きることがありません。

アラウのライヴといえば、最後の来日したときの「熱情」が忘れられません。ラストは技巧的にほぼ崩壊していますが、尋常ではない気合が胸に刺さります。FMのエアチェック音源で、いまも大事にしまってあります。
2011.08.24 23:07
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