ブラームス クラリネット・ソナタ ウラッハ(Cl) デムス(Pf)吉田修一の「flowers」を読む。
主人公の若者は、自動販売機に清涼飲料水を補充する仕事をしている。
妙な性向を持つ先輩とコンビを組み忙しい日々を送る。その合間に、先輩と自己流の活け花を楽しんだり、人妻を連れ込んでスワッピングまがいのことをしたりと、プライベートも忙しい。
季節が夏に近づくと、自動販売機の補充作業は大変な重作業になる。量も増えるし、暑さのせいで疲労もたまる一方だ。仕事仲間との小競り合いも絶えなくなる。
事件が起こったのは、そんな夏のある日。
いつも上司にいびられていた同僚が、シャワールームで理不尽な命令をされる。いつものことなので周囲は黙ってみているが、とうとう堪忍袋の緒が切れた彼がとった行動は…。
若者の生命感とやるせなさがよく描かれていて、一気に読むことができる。
芥川賞を受賞した「パークライフ」も収録されているが、「flowers」のほうが面白い。
ブラームスの2つのクラリネット・ソナタは、ともに1894年に作曲された。死の3年前のことで、彼が最後に作ったソナタとなった。
ブラームスの重厚な作風は晩年にきて最高潮になってゆくわけだが、クラリネットの軽妙な音質のせいか、厚さのなかにもさらさらとした感触があって、重苦しくない。
ブラームスはこのソナタを自らヴィオラ向けに編曲もしているが、こちらはどうにもならないくらいに重い。
この曲については、オリジナルのほうが面白く聴くことができる。
ウラッハのクラリネットは、適度に鄙びていてほんわかとしている。音そのものの軽やかさもいいものだが、音楽の起伏というか深い呼吸がなんとも言えず味わい深い。
1953年、ウイーン・コンツェルトハウス、モーツァルトザールでの録音。
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