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メイエとジンマンのブゾーニ「クラリネット小協奏曲」

2008.10.18 - ブゾーニ


mayer

ポール・メイエ(Cl) ジンマン指揮イギリス室内管/クラリネット協奏曲集



カフカの「変身」(丘沢静也訳)を読む。
最初にこの小説を読んだのは学生時代で、それは新潮文庫だった。それから約20年たった今読み返してみると、後半部は忘れていたものの、全体を通して感じられる閉塞感は昔の通りだった。
グレーゴルは甲羅が合って足が何本もあることから、ムカデ状の生き物になったと想像するが、それにだんだんと感情移入していき、やがて周囲の人間よりもむしろこの生き物のほうに人間らしさを感じていくわけ。
グレーゴルは、虫になったおかげで会社に出勤できなくなったわけだが、スゴイのは、定刻を過ぎるやいなやすっとんで家にやってくる上司。
厳しいのか過保護なのか…。


ブゾーニが「クラリネット小協奏曲」を作曲したのは1918年、第一次大戦のさなかであり、彼が当時住んでいたチューリヒはトーンハレ管の首席奏者を念頭に置いたものだったという。
冒頭の、なんとも牧歌的な響きが印象的で引き込まれるが、その後は手を変え品を変え、さまざまな場面がひっきりなしに入れ替わる。後期ロマン派のむせるような甘いメロディーが鳴ったかと思えば、お通夜のような神妙なシーンになったりと忙しい。
クラリネットの独特のふくらみ、そしてコミカルなタッチが硬軟おりまぜて色彩豊かに描かれる。
メイエのテクニックに不安はまったくない。じつになめらかな仕上がりだ。
全体で10分程度の音楽だが、密度の濃い時間を味わうことができる。


1992年3月、ロンドンでの録音。
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Comment

無題 - リベラ33

「変身」は確か高校の頃に読んだように思いますが、投げつけられた果物が甲羅にめり込んで、それが後に化膿していくところの描写に大いにショックを受けたことを覚えています。それ以来カフカは読んいません・・・。
2008.10.19 Sun 00:08 URL [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

投げつけられた果物…父親の投げたりんごですね。これがもとでグレゴーリは。ショッキングなシーンでありました。
甲羅って、面倒なものなのだなとも思いました。
2008.10.19 20:44

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

カフカの「変身」、私も大学時代に読みました。読んだときは、何とも言えない重苦しい感じをいただいたように思うのですが、すっかり忘れてしまっています。確か、この翻訳をした方が、私のドイツ語の先生で、カフカというと、その先生を思い出してしまいます。(もうお亡くなりになっていると思うのですが〜)。

ポール・メイエさんは、フランスのクラリネット界での新星だったですが、オケストラの活動をすぐに辞められて、ソロ活動に入られたですよね。クラリネットはソロ活動でもやっていけそうなんですね〜。

ブゾーニがクラリネットの曲を書いていたとは、私は全く知りませんでした。面白そうですね〜。
また、新しい曲を教えていただきました。

ミ(`w´彡)
2008.10.19 Sun 08:12 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。

とても重苦しい内容ですね。しかしなんといっても朝迎えにくる上司がどうなのかと…気になります。

メイエはソロで大活躍ですね。クラリネットはわりとソロがやりやすいのでしょうか。モーツアルトのコンチェルトもいい演奏でした。
ブゾーニのこの曲、短いですがぎっしり内容の詰まった濃い作品と思います。
2008.10.19 20:47

無題 - neoros2019

カフカには一時のめりこみましたね
バイブルとまではいきませんが『城』は電車の長い通勤時間があった頃、思い出したように何度か読み返していました
2008.10.20 Mon 23:26 [ Edit ]

Re:neoros2019さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
カフカは「変身」しか読んでいません。
最初に買った新潮文庫ではこれしか含まれていなかったような…。
今回読んだ光文社には他に短編が2つ収録されているので、せっかくだから読んでみようと思います。
2008.10.21 12:44
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