ユージン・イストミンのピアノで、ショパンの「夜想曲」全曲を聴く
(1955年の録音、ロケーション不明)。
「横縞には重力に抗して静止する地層の重みがある。縦縞には重力とともに落下する小雨や「柳条」の軽味がある。」(九鬼周造『「いき」の構造』)
今までイストミンのピアノを聴いてきて、彼の特長は粒立ちのよい音から端正な音楽を作り上げることではないかと感じている。
このショパンもそう。軽やかな音色は透明感があってとても清廉。
うららかな空気を乾いた芳香で満たしつつショパンの淡いロマンが姿を現す。
作品9-3は、スタッカートを強調させて弾いており、より軽量感が増している。
作品15-2のクッキリした高音は鋭く、軽い衝撃を感じないわけにいかない。
作品27-2はからみあった音がキチンと整理されており、その上で濃厚な夜の匂いを醸し出している。
など、聴きどころは随所に。
九鬼がイストミンを聴いたならば、ああこれは「縦縞」のピアノだね、と言うだろうか?
春。
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