究極の娯楽　－古典音楽の毒と薬

ボールトのエルガー「交響曲第1番」

2007.06.03 - エルガー

エルガー　交響曲1,2番　ボールト指揮ロンドン・フィル

カツオの刺身で一杯。
初鰹、というにはちょっと時期が遅いが、初夏の鰹もなかなか。
たまたま、もらい物の玉ねぎがあったので、つい大量に刻んでしまってこの通り。鰹にはにんにくとしょうがを欠かないが、玉ねぎはにんにくの臭みを小さくする効果があるよう。
ビールと焼酎で。玉ねぎは最後まで残ったけど、これもポン酢でつまみに。

今月のマンスリー企画は「交響曲連番マンスリー」ということで、全部違う作曲家で連番を揃えてみようという特集。で、まずは1番から始めることにする。さて何にするかと考えた。
仮に10番までやるとすると、最初の数曲は交響曲をあまり多く作らなかった作曲家のものを聴いたほうが良いかなと思う。
それを考慮すると、シューマン、ブラームス、ボロディン、ラフマニノフ、ビゼーなんていう名前が思い浮かぶが、ここは曲の長さを評価(?)して、エルガーにしてみよう。

エルガーの交響曲をひとくちに言ってしまうと、シベリウスを思わせる旋律の息の長さを武器に、時折ワーグナーのような色っぽさがある、独特の味わいがある。それに加えて、ブラームスみたいにメロディーを無理やりにひねり出したようなところもあって、それはこの第4楽章に感じるのだ。
この曲における50分という時間は、交響曲としては決して長すぎるということはないが、ここではわりと長さを感じる。なんというか、心地よい退屈を満喫できるひとときなのだ。いつ果てるかわからない執拗な弦楽器のうねりに身を任せると、やがて気持ちよくなってくる。
荘厳さに加えて、ある種の高貴さを感じるのは、過去に強力な繁栄を誇った大英帝国という幻想だろう。

ボールトのユルい切り口がこの曲には合っているような気がする。音として鋭い部分はあまりないが、その代わりに、たっぷりとバッファーをとっている余裕を感じる。そしてここではなんといっても、ロンドン・フィルの湿った響きがよい。オルガンのように重々しい大太鼓の響きを軸に、くぐもってべたついた弦の響きがなんとも心地よい。このオケはロンドンのオーケストラの中ではその渋さにおいてもっともユニークな存在だと思うのだが、このエルガーもしかり。
まだ行ったことのない、ロンドンの曇り空に思いを馳せずにいられない。
休日にエルガーの交響曲はいいものである。

Comment(5) TrackBack() ▲ENTRY-TOP

≪シノーポリのシューマン「交響曲第２番」 | Home | アバドのラヴェル「ボレロ」≫

Comment

無題 - ピースうさぎ

かつおの「刺身」ですか。今年1度もかつおを食べていないので食べたくなりました。

エルガーのエルガーの交響曲第1番はノリントンのものしか聴いていないですが、良い曲ですね。こちらもじっくり聴きたくなりました。
今年はアニヴァーサリーもあってか割と演奏されるようです。

2007.06.03 Sun 21:32 URL [ Edit ]

Re:ピースうさぎさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
カツオの叩きなんかは冷凍のものが出回っているので、年がら年中食べられますが、刺身は春から秋ですかね。この時期のものもなかなかです。

ノリントンがやっているのですか。それは興味深いです。彼の活動は、古楽器という枠を超えていますね。

2007.06.03 21:57

無題 - Niklaus Vogel

吉田さん、こんばんは！鰹おいしそうです…(笑)。
エルガーでこられましたか！何故かここ数日エルガーの名前を皆さまのブログで拝見することが多く、その都度「苦手です～」と臆面もなく言ってしまっています(笑)。しかし、再度のチャンスを得るきっかけをいただきました。

> 荘厳さに加えて、ある種の高貴さを感じるのは、過去に強力な繁栄を誇った大英帝国という幻想だろう。

エルガー特有の鬱然というかしつこさというか…それをこのように聞けばいいという指針をお聞きしたような思いです。

2007.06.03 Sun 22:00 URL [ Edit ]

Re:Niklaus Vogelさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
鰹、大好物なのです(笑)。

1回目はエルガーにしてみました。あまりしょっちゅう聴く曲ではないのですが、たまに聴くとなかなか面白いのです。
エルガー特有のしつこさには、なにかシベリウスと共通するものを感じるのです。音楽の流れに身を任せていればいいのかなと思ってきました。

2007.06.03 22:05

無題 - naoping

こんばんは。Niklaus Vogelさんの通報？によりやってきました。エルガーとカツオの取り合わせなど、まるで我が家にいるみたいです。でも私はカツオはやっぱりタタキが好きですね。根っからのカツオ好きなので、昔懐かしの鰹節削り器を購入しようか迷っています。

2007.06.03 Sun 22:31 URL [ Edit ]

Re:naopingさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
通報されちゃいましたか。
カツオはタタキももちろんいいですね。ごくたまにですが、一匹まるごと手に入ったときは、ガスコンロで焼いて食います。
鰹節削り器はいまや通ですね。一般のスーパーではあまり鰹節を見かけなくなりましたね。

2007.06.04 12:59

無題 - yokochan

こんばんは。カツオとエルガーに惹かれて登場しました。カツオ好きって多いんですね。
私も超好きで、スーパーで売っているサク一本はいけますね。もちろん、ビールと焼酎あってのことですが。
エルガーの１番は、これまた超好き。
冒頭から涙腺はうるみ、最後に同じ旋律がでてくると、もうどうしようもないです。
ボールトとＬＰＯ、ご指摘のとおり渋い名演ですね。

2007.06.03 Sun 23:28 URL [ Edit ]

Re:yokochanさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
私のまわりにもカツオ好きが多いような気がします。
おかずというよりは、やはりつまみで。薬味の多いのが好みであります。最近は年中安く手に入るのでうれしくて。
エルガーの交響曲は、あの長さがいいですね。終わってほしくないと思いながら聴きます。

2007.06.04 13:02

無題 - しじみ

こんばんは。
主催者なのにすっかり出遅れてしまいスミマセン。
エルガーの交響曲ですか！エルガー、ヴォーン=ウィリアムス、イギリスの作曲家は私も候補にあったのですが、どうにも敷居が高くいまのところ断念しております。さすがは吉田さん、文章に聴き込みの深さを感じます･･･。
ボールトはホルストの「惑星」を愛聴しております。
ところで、ン年前にロンドン豪遊にでかけましたが、排気ガスがすごくて鼻の中が毎日真っ黒になったのを今でも覚えています。ついでにバッキンガム宮殿の前で写真を撮ってあげるよ～と近づいてきたおじさん（あちらの方はみな紳士にみえる。危険デス）に見事騙されたのは私です。ロンドンへの想いに水をさしてごめんなさい。。。

2007.06.04 Mon 22:00 URL [ Edit ]

Re:しじみさん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

コメントありがとうございます。
エルガーの交響曲はなかなかです。あまりしょっちゅう聴いていたわけではなく、この企画で改めて聴きなおしてみました。よって、大して聴き込んではいないので、もし深さを感じられたならハッタリがうまくいったと…。
ボールトの「惑星」はロンドン・フィルのものを好んで聴きますが、あれはいいですねー。

バッキンガム宮殿のあやしいおじさん、面白そうですね（と言ってはいかんですか）。また話を聞かせてくださいね。

2007.06.05 12:57

コメントタイトル：
投稿者名：
Mail：
URL：
投稿内容：
Password：	※１
Secret：	管理者にだけ表示を許可する※２
※１　パスワードを設定するとご自分が投稿した記事を編集することができます。 ※２　チェックを入れると管理者のみが見ることのできるメッセージが送れます。

▲PAGE-TOP

TrackBack

この記事へのトラックバック

TrackBackURL
→