ワーグナー「ニーベルンクの指輪(管弦楽版)」 マゼール指揮ベルリン・フィル村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」を読む。
ことエッセイに関しては軽妙なものを書く村上だが、これはけっこうヘビーな読み物。エッセイの形をとっているが、一種の体験記に近いものがある。
なにしろマラソンのこと、トライアスロンのことを、微に入り細に入り書きつくしている。読んでいる方は、だんだんと自分が走っているみたいに、ぜいぜいしてくる。実際、自分が生活に疲れているせいもあるのだろうけど。これはなかなか(書く方も読むほうも)根気がいる。
途中で小説論を挟んでいるのだが、こちらもなかなか興味深い読み物だった。
マゼールがベルリン・フィルを振った「ニーベルンクの指輪」の管弦楽によるダイジェスト版を聴く。
ショルティやヤノフスキなど、全曲から抜粋したものはわりと多くあるが、これはCD用にあえて編集したもの。全曲の聴きどころ(特においしいところ)が抽出されているし、つなぎ目がスムース。編集はマゼールが実施したとのこと、じつにうまいこと編集されている。全体を通してひとつの交響詩のように聴くことができる。
「ワルキューレの騎行」などを聴くと、声がないのは少々物足りない感じが否めないのは仕方のないところだろう。
マゼールの指揮はケレン味のない正攻法なもので、立派であるが驚かせるような仕掛けはない。演奏そのものは、マゼールというよりはベルリン・フィルを聴くべき録音のような気がする。
1987年12月、ベルリン、フィルハーモニーホールでの録音
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