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"草にすわる"、ショルティ、"トリスタンとイゾルデ"

2014.06.01 - ワーグナー
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白石一文の「草にすわる」を読む。

これは、大企業を辞めてぶらぶらしている主人公が女と心中未遂をはかり、病院のなかで人生について改めて思いを馳せる物語。
本作の初版は、2003年だから、著者が40代半ばの頃の作品ということになる。主人公は30歳くらいの設定であるが、内容は上に書いたように、けっこう青臭い。
けれど、その青臭さが白石の持ち味とも言え、嫌いではない。なにか、妙な魅力がある。

これから先も、青臭い話を書き続けて欲しいものだ。








ショルティの指揮でワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を聴く。

これは骨太な演奏。柔らかくて豊満なオーケストラ、力が漲るコーラス、そして当時当代一であったニルソンの肉厚の歌唱。
4時間という時間に加えてこのボリュームだから、聴いた後に疲労がないわけではない。けれども当然、ずっしりとした手ごたえがある。

ショルティは録音当時40代であるから、血気盛んな頃であるが、意外におとなしい。もちろん、鳴らすべきところではガンガン鳴らせているけれども、鋭角的ではない。並行して動いていた「ラインの黄金」のほうはかなり尖っていたから、これはオーケストラが云々というわけではなさそうである。
ショルティが、このオペラを演奏するにあたって、厚くて太い音を志向した、ということだろう。

この曲は長いから、あまり多くの演奏を聴いているわけではない。
フルトヴェングラー/フィルハーモニア、ベーム/バイロイト、クライバー/ドレスデン、バレンボイム/バイロイト、といったところくらい。それらの中で、オーケストラの響きの多彩さは、このショルティ盤が隋一と思われる。

歌手では、やはりニルソンがいい。ベーム盤での劇的さが控えめなのは、セッションだからだろう。余裕たっぷり、貫禄満点。
ウールはまずまず。悪くはないが、地味である。トリスタンの存在感はやや希薄。
クラウゼはいい。声そのものが美しいし、雰囲気がある。

この演奏を聴くにあたり、ちょくちょくとベーム盤、それとクライバー盤を聴いていた。当たり前だが、どれもそれぞれ持ち味が異なる。そうしてこのショルティ盤もまた、好きな演奏のひとつに加えることは吝かではないという気持ちになった。
ベームとクライバーについては、また機会があったら、書いてみたい。


ビルギット・ニルソン(イゾルデ)
フリッツ・ウール(トリスタン)
レジーナ・レズニック(ブランゲーネ)
トム・クラウゼ(クルヴェナール)
アルノルト・ヴァン・ミル(マルケ王)
ヴァルデマール・クメント(水夫)
エルンスト・コツープ(メロート)
ペーター・クライン(牧童)
テオドール・キルシュビヒラー(舵手)
ウィーン楽友協会合唱団(合唱指揮:ラインホルト・シュミット)


1960年9月、ウイーン、ゾフィエンザールでの録音。







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夕暮れ。


冷やし中華とツイッター始めました!






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Comment

無題 - アソー

お久しぶりです。白石一文は好きな作家ですが結構人物設定がワンパターンなのと理屈っぽいのとで、「またか…」となる時があります。あと、やたらと登場人物が癌に犯され末期を迎えます。「草にすわる」も
ドロップアウトした主人公が刹那的に自殺を図る話ですが、最後ハッピーエンドで終わるので、いつもの後味の悪さ、と言うかモヤっとした読後感がなくて良いですね。
最近の「快挙」と「告白」はまだ読んでないのですが、「彼が通る不思議なコースを私も」は、最後またモヤモヤしてしまいました。
とにかく白石一文のキーワードは、①エリート②不倫③癌ですね。



2014.06.02 Mon 23:27 [ Edit ]

こんばんは。 - 管理人:芳野達司

白石一文を知ったのは「この世の全部を敵に回して」の文庫化のときだったので、比較的最近です。それ以来、ちょくちょく読んでいます。
2011年以降の作品は、まだ読んでいません。
白石一文の登場人物はエリートが多いと言われますが、それは彼がエリートだから、という単純な理由なのじゃないかと思います。高村薫の主人公も、エリートだけではありませんが、みな賢い。登場人物の頭がよく働くことが、小説の世界を広げているからだと推測します。
新しい作品も読みたいです。
2014.06.03 22:39

ショルティのワーグナー - neoros2019

ショルティのトリスタンは現役盤で手にはいるんですかね?
ショルティの指輪全曲(CD14枚組)を購入計画に入れるか否かやっと重い腰があがりました。
HMVでDVDや豪華解説が付帯したものは現在廃盤になっているようです
アマゾンの中古かヤフオクで辛抱強く待たねばならないかもしれません。
2014.06.15 Sun 11:50 [ Edit ]

ショルティ、いいです。 - 管理人:芳野達司

neoros2019さん、こんばんは。

ショルティのトリスタンは、下記のサイト(HMV)でまだ発売されているようです。ご参考に。
http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%B0%E3%83%8A%E3%83%BC%EF%BC%881813-1883%EF%BC%89_000000000019275/item_%E3%80%8E%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%82%A4%E3%82%BE%E3%83%AB%E3%83%87%E3%80%8F%E5%85%A8%E6%9B%B2%E3%80%80%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%EF%BC%86%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%80%81%E3%83%8B%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%80%81%E3%82%A6%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%80%81%E4%BB%96%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%99%EF%BC%96%EF%BC%90%E3%80%80%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%AC%E3%82%AA%EF%BC%89%EF%BC%88%EF%BC%94%EF%BC%A3%EF%BC%A4%EF%BC%89_5075085

ショルティの指輪はともかく、トリスタンはあまり世評は高くないですが、どうしてどうして、ニルソンは素晴らしいし、オケもガツンと鳴っています。
今、ベーム盤を聴いていますが、遜色ないです。どちらも、それぞれいい。
2014.06.15 20:41
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